フェザール・イゼルカント

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フェザール・イゼルカント(Fezarl Ezelcant)

火星圏独立国家であるヴェイガンの総帥。地球侵攻計画を打ち立てた張本人であり、火星移民計画の初期移民でもある。地球を「エデン」と称して移住を悲願としており、国民達から強い支持を受けている。
周囲にはゼハート・ガレットザナルド・ベイハートの様に彼を慕う腹心も多く、とりわけゼハートには幼い頃から目をかけている。その為、彼に対しては作戦に失敗しても常に寛大な処置を行っている。
ただ、地球から地球人類を一掃し、国民を地球に帰還させる事を最終目標とすると語るが、あえて敵に生き延びる猶予を与えるような作戦を立案するなど、その真意は死の恐怖を感じると同時に生きる価値を考えさせるためのこともある。
またXラウンダー についても、自身が非常に強大なXラウンダーでありながら「理性を持たぬ野獣へ還る」「人類の進化ではなく退化である」として、その存在について否定的な側面を揶揄している。一人称は「私」。

第三部よりも約80年前に地球圏でEXA-DBの一部のデータを手に入れる事に成功した事で、争いを繰り返す人類に絶望し、そのデータを活かしてヴェイガンに連邦以上の戦力を保持する事を可能にした。

極めて研ぎ澄まされた頭脳の持ち主であり、作戦が失敗した場合に備えた別作戦を前もって構築・実行するなどとにかく抜け目のない切れ者ぶりを発揮している。

プロジェクトエデンは地球人類の殲滅と火星人類の地球への回帰が目的とされていたが、先述したようにそれは建前で、実際にはマーズレイの影響などで死が身近にある為、人を愛す事をしなくなりつつあったヴェイガンを見て来た事もあり人が人である世界を作り出す為に人類全体を「ふるい」にかけ、優秀と認められた人間のみを残す計画であった。この真実は火星住人はおろかゼハートにすら知らされていない他、火星圏での幾つかのコロニー事故はイゼルカント当人が引き起こした事である事も判明。「計画に犠牲はつきもの」と、時には同じヴェイガンの民すら見殺せる冷酷さを見せるなど最早その理想は半ば狂気じみてしまっている(但し、ゼハートには本人もそれが狂気である事を自覚していると言っているが、実際に自覚しているのかは不明)。イゼルガントが愛する息子ロミとの死別以降、歯止めが利かなくなっていることの一例でもある。

だが、狂気に染まったとはいえ、息子と瓜二つの容姿をしていたキオに捕虜としては破格の待遇をし、そのキオが自分の理想に賛同しない事で半狂乱になったり、そして追い詰めたキオにとどめを刺すことが出来なかったりと、ある意味人間らしさは失ってはいなかった。

イゼルガントはキオにはプロジェクトエデンの本当の目的を教えており、それはキオ経由でアセムに伝わり、アセムの口から断片的にゼハートへと漏洩(ゼハート自身はそれを信じなかったため、アセムも全貌を伝えることはできなかったが)。その後、ゼハートには真実をある程度は知らせる。

凄まじく強いXラウンダー能力に指導者の才、アセム相手に互角以上に戦える操縦技術、ブレることのない威風堂々たる器を兼ね備えたガンダムシリーズきっての大物悪役であるが、同時に息子を失った悲しみでタガが外れてしまった悲劇の狂人でもある。

ヴェイガンの指導者として絶対的な地位にいたが、それ故に後継者のゼハートはその跡を継ごうと必死になり、道を外れてしまい、ザナルドもゼハートを新たな指導者として認めずに謀反に近い独断行動を起こすなど、絶対的が故に指導者を退いた後のヴェイガンに不和を引き起こす結果となってしまった。

ガンダムシリーズにおける敵組織のトップでは珍しく自身の目的を形は違えど達成した人物でもある。

登場作品と役柄

機動戦士ガンダムAGE(第一部)
終盤で名前のみが登場。
機動戦士ガンダムAGE(第二部)
回想シーン、口元による声のみの登場。
機動戦士ガンダムAGE(第三部)
全身絵が発表され、本格的に登場。
立体映像でオリバーノーツに姿を現し、地球侵略の開始を宣言。これを契機に各地に潜伏していたヴェイガンの同志達が一斉に蜂起し、非常に短い期間で地上の40%近くを制圧する事に成功する。
後に、セカンドムーンに連れてこられたキオ・アスノを自ら出迎え、ヴェイガンの直面する現実を目の当たりにさせる。
火星の民の多くがそうであるように、自身もまたマーズ・レイの病に侵されていて、余命半年の宣告を受けている。
機動戦士ガンダムAGE(第四部)
マーズレイが末期症状になる中で、セカンドムーンが地球圏に移動した後にゼハートに「プロジェクトエデン」の真意を問いただされて、真の目的をゼハートに話した。(但し、その過程の実験で火星圏のコロニーを破壊したなどの都合の悪い情報は意図的に伏せていたと思われる)その後「プロジェクトエデン」の全権をゼハートに託しその補佐をザナルドとゼラに任せた。その後はセカンドムーンで病床に伏せていた。ラ・グラミス攻防戦でゼハートの死を知り、最後はキオが世界を変えた事を知り満足しドレーネに看取られて息を引き取る。

人間関係

ギーラ・ゾイ
第一部におけるイゼルカントの尖兵たる指揮官。戦死しても魂になり地球に帰れるという旨の教義を授けられている。
デシル・ガレット
Xラウンダーとしての才能を見こまれ温存されていた(とデシル本人は思っていた)。一応、イゼルガントは彼のことを優良種と認定してはいたがそれがデシルを認めての事か単に計画の為に利用していただけなのかは定かではない。
ゼハート・ガレット
デシルの弟。幼少の頃から目をかけていたXラウンダー。2部では地球制圧軍の総司令に任命する。また、ゼハートを死なせない為にイゼルカントは離れた場所から彼の意識の中に直接語りかけるて助けた事も。全幅の信頼を置いていた彼に対して最終的に自分が長くない事を伝え、彼に自身の後継者としてプロジェクトエデンの全権とガンダムレギルスを託した。
メデル・ザント
第二部における尖兵たる指揮官。エデン(ヴェイガンの楽園)の姿を教示されていた。
ザナルド・ベイハート
第三部における側近。これまでにない巨大要塞や大規模な部隊を任されている。
キオ・アスノ
ザナルドによってセカンドムーンに連行された彼に、ヴェイガンの直面する現実を目の当たりにさせる。亡き息子ロミと面差しの似たキオを直々に迎え、自身の真意を包み隠さず明かした。
ドレーネ・イゼルカント
妻、コールドスリープの影響か若々しい。
ロミ・イゼルカント
今は亡き息子でキオ・アスノとは瓜二つ。最期の言葉が原因でキオを彼の生まれ代わりだと信じ込んでいる。彼の死が全ての元凶となる。
ゼラ・ギンス
イゼルカントの遺伝子から作られた強化クローン人間。イゼルカントと同等のXラウンダー能力を持つヴェイガン最強のパイロット。本来ならば、自信の後継者としてプロジェクトエデンの全権はゼラに引き継がせる筈だったが、ゼラはイゼルカントの「力」を受け継ぐ事に成功したが、「魂」までは受け継がせる事が出来なかった為、イゼルカントの「魂」を受け継いだゼハートにプロジェクトエデンの全権は委ねられる事になった。
フロイ・オルフェノア
地球側の交渉相手だが、公の場でスパイとして処刑されかけた事を考えると、交渉相手としては重要な相手ではなかった。
フリット・アスノ
直接的な面識はないが長年の宿敵。

名台詞

第一部では別人が話した名前しか存在しなかった。 第二部ではシルエットのみだったが、第三部以降では全身が写るようになった。

第一部

「(ギーラ)我々も魂になれば、地球に帰れる……。イゼルカント様、そうですよね?私もこれで、地球に……。」
ギーラの台詞のみ登場。
「(メデル・ザント)気に病むことはない。イゼルカント様の計画はまだ始まったばかりだ。」
メデル・ザントの台詞のみ登場。

第二部

「ゼハートよ。」
「時代が移り変わろうと、人が愚かであることは変わらない。無益な戦いを繰り返すのだ。いつの日か、この愚かな連鎖を断ち切らねばならん。だからこそ、私はこの計画を立案した。」
「嘗て地球種は、火星圏に移住した我等の先祖を見捨て、人間らしく生きる権利を奪った。そのような愚劣な者から母なる大地を取り戻し、我々だけの新世界を作る。」
「それが我が計画。私が紡ぐ物語だ。」
「そこには戦いなどない。人が穏やかに暮らす素晴しい世界だ……。」
イゼルカントが紡ぐ回想として登場。
「この作戦は失敗をするはずのない作戦なのだからな。」
「お前にはまだやるべきことがある。」
第27話の回想に登場。
「ゼハート。私と共に、夢を叶えようではないか。」
「今は眠れ。次の時代にもお前の役目はある。ゼハート……。」

第三部

「我が名はイゼルカント。ヴェイガンの最高指導者である。よく聞くがいい、地球種よ。ヴェイガンはここに、地球侵略の全面開始を宣言する。」
「分かるかキオ。我々は死ぬ事が悲しいのではない。人として生きられないことが悲しいのだ。」
「行ったはずだ。」
「他でもない。君のモビルスーツのことだ。」
「(ザナルド)我々の新たなるガンダムは完成に向け、最終段階に入っています。」
「(ザナルド)しかし、1つ問題が。」
「ん?」
「(ザナルド)パイロットが使う認証デバイスのセキュリティが複雑で、完全に解析できていないのです。あの少年の生体データと認証コードが分かればあるいは……。」
「ここに敵が?」
「(ザナルド)はい。ビシディアンが見えざる傘の技術を利用して、近づいてきたようです。まさか、我々の技術を保有しているとは……。」
「対応は任せる。被害は最小限に留めろ!」
「(ザナルド)はっ!」
「生まれ変わったのなら…生まれ変わって私の前に現れたのなら、なぜ分からないのだ!?」
亡き息子・ロミと生き写しなキオに対して。真相は不明であるが、ロミとキオは『他人の空似』にしては出来過ぎているほど本当にそっくりである。

第四部

「神ではない。」
「(ザナルド)イゼルカント様!?」
「ザナルド!」
「お前の名は、ゼラ・ギンス。」
「分からんか。」
「私の狂気に……。」
「ドレーネ……私は戦争をしたかったわけではない…ただ作りたかっただけなのだ……。人が人らしく生きていける新世界を……。」
「私は今でもあの子が、ロミの生まれ変わりではないかと思っている……。」
「ありがとう、キオ。地球はお前に託そう……。」
(どうか見せてくれ……人が人でいられる…未来を……。)
病床の伏せながらも、自身の思いと妻のドレーネに話し、世界が変わりキオに人の未来を託した。その後、イゼルカントは意識を失う。イゼルカントは狂気に染まらずにやり方さえ間違えなければ歴史に名を残す良き指導者になっていただろう。

搭乗機体・関連機体

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