概要
[[地球連邦軍 (UC)|地球連邦軍]]が開発した戦闘ポッド<ref>一般的には本機は「モビルポッド」とされるが、これは駆逐モビルポッド「[[オッゴ]]」の登場により普及した分類であり、ゲーム等では「モビルアーマー」に、プラモデルの解説書では「戦闘ポッドであり、簡易型MS」と表記される。</ref>。[[熱核融合炉]]やビーム兵器などは装備しておらず、その名の通り、球形のコントロールブロックに2本のマニピュレータと大型キャノン砲などを装備した宇宙用のワンマンポッドであり、[[一年戦争]]後期に大量に実戦投入された。
[[ジム]]と同じく集団戦を想定しており、ジム1機をリーダーとし、2機のボールをその支援に充てて最小単位とする戦闘ユニットが大量に投入された。これは、旧世紀における戦闘機の編隊構成などに採用されたハイ・ローミックス構想に近い運用法であったとされる。また、本機の大量投入による飽和攻撃は、特に一年戦争終盤の情勢を左右した宇宙要塞の攻略などにおいて有効だった。
連邦軍の主力MSとして生産されたジムであったが、生産性を優先した結果、スペックが要求基準に達していない機体が多く、軍首脳部も宇宙での戦力はジムのみでは不充分と考えていた。また、生産数そのものも想定より不足していたため、その埋め合わせとして宇宙空間における作業用として官民問わず使用されていた[[スペースポッド]]「SP-W03」を兵器化して開発されたのがボールである。[[宇宙世紀]]0079年6月に[[プロトタイプ・ボール|プロトタイプ]]が完成し、テストに並行して量産が行われ、[[ソロモン]]海戦から[[ア・バオア・クー]]攻略に至る期間中に1200機が参戦している。
ボールは、SP-W03の設計を流用しつつ、パイロットのサバイバビリティを向上させるため、コクピット(原型機のメインフレーム)周りをトラスフレーム構造で覆い、戦闘レベルまで強化。そこに燃料電池やプロペラントタンクなどを追加した上で必要充分な装甲を施している。コクピットブロックや生命維持装置、制御機器はSP-W03の物がほぼそのまま流用され、基礎OSにも殆ど手は加えられていない<ref>基本プログラムに機能拡張やアプリケーションをいくつか追加するだけで必要充分な性能を発揮したと言われている。なお、ハード及びソフトの検証はソロモン攻略戦以降も続けられていた。</ref>。
メインスラスターとして高機動バーニアシステムを搭載し、姿勢制御は機体各所に配置されたサブスラスターで行う。これは、一種の指向性爆薬に近い固体燃料ペレットを爆発的に燃焼させる事で瞬間的に大推力を発生させるもので、燃料の消費は激しいが、メインスラスターを使わずに機体を自在に移動出来る利点があった。
ボールは燃料電池を動力源としているため、MSレベルの運動性や機動性を確保出来る訳でもなく、[[AMBAC]]機動もビーム兵器のドライブも不可能であるが、帰還後の機体冷却設備などが不要であり、ボールのみならば軽武装艦やただの輸送艦も空母として運用出来た。
また、設計当初から生産時期や施設による多少の仕様違いは織り込み済みであり、マニピュレータの仕様や武装にもいくつかのバリエーションが存在する。特にそれぞれの生産拠点や運用部隊による塗装バリエーションは多岐に渡っており、実際の稼働や任務に支障がない限り、部隊単位で独自の塗装も認められていたという。中でも旧世紀の戦闘機に倣った、いわゆる「シャークマウス塗装」は、実戦投入当初から多くのパイロットに好まれた塗装パターンの一つであった。
MSと比較した場合、戦力としては心許なく、連邦兵からは「丸い棺桶」や「一つ目のマト」と揶揄される事もあった。戦闘以外では本来の用途である作業目的で活用され<ref>『0083』でソーラ・システムII展開作業を行っている機体など。</ref>、一部は武装を廃して民間に払い下げられた機体も存在する。また、原型機が元々過酷な宇宙環境での作業を目的としていたこともあってか、センサー類に関してはザクはおろかジム以上、場合によっては[[ガンキャノン]]並の性能があるとされる。