ヴェーダ
ヴェーダ(Veda)
イオリア・シュヘンベルグによって、西暦2100年頃に建造された量子型演算処理システム。
ソレスタルビーイング、延いてはイオリアの計画の基幹となる存在であり、建造から200年近く経つが、その間にその時期の最新鋭技術を投入され改修やメンテナンスを施されている。
武力介入の時代(西暦2300年代)でも世界最高の性能を有している量子コンピューターで、その情報ネットワークは巧妙に隠されながらも世界中に張り巡らされている。
基本的にはイオリアの理想や価値観を最優先するように設計されていたが、度重なるバージョンアップや他人の手が入ったため、必ずしもイオリアの意に沿った結果をヴェーダが出すとは限らない。
古代インドのバラモン教や、それが発展した現代インドのヒンズー教の聖典群(インドに残されている最古の文章も含まれる)と同じ名前を有しているが、この場合はもともとの「知識」という意味で付けられている。
その複雑さ故に、データとして人間の思考を有機物含む端末にインプットし生命体を生成することすら可能だが、ヴェーダ自体は自我を有してはいない。いわば超高性能計算機だがその域を出ておらず、判断は機械的。そのため、矛盾だらけな人の精神構造を理解するには至っておらず、そのために生体端末「イノベイド」「ガンダムマイスター874」が開発された。こういった端末は固有の自我を有すると共に常にヴェーダとリンクしており、ヴェーダに人間のデータをアップデートする一方で監視されている。
このイノベイド達は、設計の段階で刷り込みを施されており、「個々が思うより良い計画の在り方を目指す独断行動」はあれど、「計画の完全な妨害や中断」は出来ないようになっている。
また、太陽炉に対しても常に量子通信でデータを収集しており、ヴェーダにインプットされている基準で離反者と判断された者には容赦なく処罰が下される。
ただし、「振り幅を持った計画の進行」が基本理念であり、また「人間の意見を取り入れることで、計画に柔軟性を持たせる」というイオリアの思想に従い、関係者からの意見は計画に支障がない限り積極的に採用する。事実、申請すれば大方の提案は通る。提案については、基本的には自身は支援せず提案者の裁量・責任で全て行わせる「承認」という形で許可するが、ヴェーダの方でも計画の為に必要性の高い提案であると判断すれば、「推奨」事案として情報提供等の支援を行う。
だがこれは提案そのものを理解しての行動ではなく、人間の心理的要因を含む提案はその合理性よりも「人を理解できないので、できるだけ触れないでおく」という消極的な理由からである。
これ以外にも「計画に致命的な支障が出ない」とヴェーダが判断すれば、たとえ組織への背信行為であろうと容認される場合がある。コーナー家やリボンズ・アルマークがヴェーダを掌握するその時まで特に干渉されなかったのも、ヴェーダがギリギリまで容認し続けていたためである。
現在ヴェーダが最低水準と判断するのは、「人類が滅亡しない範囲で戦争行為が起きなければそれで良い」というもの。たとえその恒久平和らしきものが実現できた社会に自由意志や人権が存在せずとも、ヴェーダの関知するところではない。
情報機密の段階としてレベル7まで存在し、ティエリア・アーデやリボンズはレベル7まで、スメラギ・李・ノリエガや監視者などはレベル3~4程度までアクセスが可能。ネーナ・トリニティは外部から特別に権限を与えられているので、詳細なレベルは不明。
そのメモリには様々な技術が蓄積されており、情報のリアルタイムでの書き換え、さらに全世界のコンピュータへのハッキングを気付かせないまま行うといったことも可能としている。
もっとも、ネットワークに接続された端末であれば問題なくハッキング出来るヴェーダだが、断線ないし隔絶された独立端末には干渉しようがない。その場合にはイノベイドなどのエージェントの出番となる。
ヴェーダ自体はネットワーク上に存在するが、そのコアとなる演算装置は月に存在し、リボンズの手引きでアレハンドロが手中に収め、後に「外宇宙航行母船ソレスタルビーイング」の予備ターミナルに移動し、その一部になった。
リボンズの勢力に使用され、地球連邦の情報統制に利用されたが、ティエリアがヴェーダと一体となったことで奪還に成功。その後は連邦政府の恩恵を受ける一方、メモリ内に存在するティエリアによって管理が行われていたようである。