アスタロス
アスタロス(Astaroth)
ジオン公国軍の開発した生物兵器。既存の生物兵器とは異なる性質から、「生物環境兵器」とも表記される。
元来は一年戦争以前、コロニー内の過酷な環境下で育成出来る植物の研究から端を発した物であり、連邦系のスペースコロニー用植物群にジオンが独自開発した遺伝情報をウィルスベクターを用いる事で成長性を促進させる植物寄生体[1]であった。これを用いる事で連邦系品種の10倍~15倍の速度で成長する植物を大量かつ安価に生産し、ジオンの農業生産性は飛躍的に向上。同時に、過酷な環境下でも発育可能な性質は地球の砂漠化防止にも期待をかけられていた。
研究中の副産物として生まれた繁殖力の強すぎる個体が南極条約に抵触しない兵器としての転用が持ち上がるも、ジオン軍も地球環境を破壊するこの技術の扱いを決めかねていた。だが、開発拠点であったキャリフォルニアベースが連邦軍の攻撃で陥落した際にマッチモニードが強奪に近い形で持ち出し、アスタロスを宇宙(より正確に言えばザビ家の支配下)へ持ち帰る為にオーストラリアに持ち込んだ。オーストラリアに展開していた連邦軍とジオン軍は双方共にその情報を事前にキャッチし、ホワイト・ディンゴの活躍やウォルター・カーティスの暗躍よってオーストラリアに持ち込まれたサンプルは全て処分された。
アスタロスは散布された場合、旺盛過ぎる繁殖力で他の生態系を破壊する。特に地球よりも生物多様性の薄いコロニーで使用した場合、地球で用いるよりも高い効果を発揮するとされる。その性質からこれをコロニーに散布する為のシステムとして「ザビ家の復讐装置」と呼ばれるシステムが考案され、キマイラ隊のプラント船ミナレットに搭載されていた。
「アスタロス」とはヨーロッパの伝承に伝わる悪魔であり、アスタロトやアシュタロンとも呼ばれている。伝承におけるアスタロスはバビロニアの豊穣の女神イシュタルを起源としている事から、アスタロスの名称は開発経緯から命名されたのではないかと推測されている。
登場作品
- 機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…
- 初出作品。キャリフォルニアからオーストラリアに持ち込まれ、これを回収する任務がホワイト・ディンゴに課せられた。小説版ではニーアライトがこれに加えてトリントン基地から核弾頭も奪取し、アスタロスと共に宇宙へ持ち出そうとするが、それを危険視したウォルターの采配もあって失敗に終わった。
- 機動戦士ガンダム GROUND ZERO コロニーの落ちた地で ―RISE FROM THE ASHES―
- 地質学の観点からアスタロスの開発に携わった人物としてオリヴィア・グラントが設定された。ただし、彼女が知っているのはあくまで兵器転用前の概要と原理である。
- 機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還
- コロニー攻撃用兵器としてミナレットに秘匿された「ザビ家の復讐装置」に搭載されている事が示唆されている。復讐装置の制御システムは既に破壊されていたが、ヒュー・マルキン・ケルビンの手により、艦に搭載されたエキドナの解析によってジョニー・ライデンのバイタルをキーとして、各コロニーへこれを搭載したコンテナ及びビットが放出されるように仕組まれていた。
ミナレットから放たれたアスタロトのコンテナはその場に居た勢力の手ですべて撃墜され、レッド・ウェイラインがシステム中枢を破壊した事で被害は最小限に抑えられ、コロニー一基の被害に留まった。
また、アスタロスの資料として一年戦争以前の研究者のプレゼンテーション映像があり、そこには在りし日のジオン・ズム・ダイクンやギレン・ザビらが顔を揃えていた。
関連用語
リンク
脚注
- ↑ 作用を簡単かつ広範囲に適応させる為に宿主非特異的に形質転換を引き起こすベクターが使用されている。