一年戦争

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一年戦争(One Year War)[編集 | ソースを編集]

機動戦士ガンダム』の舞台となる、地球連邦政府ジオン公国による戦争。宇宙世紀0079年1月3日に開戦し、宇宙世紀0080年1月1日に終戦した事からその名で呼ばれている。連邦からの独立を訴えた戦争である性質上、ジオン軍人は戦時中より同戦争を「ジオン独立戦争」と呼称するケースが存在する。

宇宙世紀0079年1月3日、長く続いたスペースノイドアースノイドの対立を背景として、ジオン公国地球連邦政府からの独立を求めて宣戦布告。ジオン軍モビルスーツミノフスキー粒子といった最新技術を用いた電撃戦で地球連邦軍を圧倒し、以降の戦争形態を一変させた。開戦当初はジオンによる毒ガス攻撃や核攻撃、果ては地球へのコロニー落としが実行され、開戦から僅か一週間で地球圏の総人口の半数が死滅するという甚大な被害をもたらした。

ジオンはその後、地球侵攻作戦を実施し、その支配地域を拡大させていったが、補給線の限界から地球降下後に戦線が膠着。その間にモビルスーツの開発を進め、戦力を整えた連邦軍はオデッサ作戦をはじめとする反攻作戦を展開し、その物量もあってサイド3の防衛ラインを担うソロモンを陥落させ、ア・バオア・クーへと侵攻。両要塞での戦いによってジオン公国の中枢たるザビ家がほぼ全滅。その後グラナダで終戦協定が締結され、一年に及ぶ戦争は終結した。

戦後、ジオン公国ジオン共和国として存続したものの、その軍備などに制約が課された。一方で、敗戦を認めない残存戦力は地球圏の内外に潜伏し、ジオン残党として戦後世界に混乱をきたす事になる。

時節 [編集 | ソースを編集]

宇宙世紀0079年1月3日:ジオン公国、地球連邦政府へ宣戦布告
1月3日~1月10日:一週間戦争ブリティッシュ作戦
宣戦布告の直後、ジオン軍は月面都市グラナダと、サイド1・2・4へ奇襲を敢行。海兵隊によって毒ガス兵器である「GGガス」を用いた無差別虐殺を行い、そのうちサイド2のコロニー「アイランド・イフィッシュ」を地球連邦軍の本部「ジャブロー」へ落下させる「ブリティッシュ作戦」を発動する。しかし連邦軍の抵抗によって失敗、一部が落着したシドニーは消滅してオーストラリア大陸南東部には超大型のクレーター(シドニー湾)が発生したほか、バイカル湖や北米を中心に地球全土に破片が落着し甚大な被害をもたらした。
この大量虐殺の結果、開戦から一週間で地球総人口の半数が死亡したと言われる。
1月11日:サイド6、中立宣言
1月15日~16日:ルウム戦役
ジオン軍と連邦軍による最も大きな会戦の一つ。交戦の理由はブリティッシュ作戦に失敗したジオン軍がサイド5(ルウム)のコロニーの奪取を試みたためとも、連邦軍の残存艦隊を叩くためとも言われる。
当初はサラミス級マゼラン級などの砲艦、セイバーフィッシュなどの戦闘機を主体とした連邦軍が優勢であったが、その後ジオン軍がモビルスーツを投入した事で数倍の戦力差を覆して大勝し、連邦軍は総指揮官であるレビル将軍を捕虜とされ、戦力の大半を失って(そして残存戦力もジオン軍に太刀打ちできないと分かって)壊滅状態となった。
1月31日:南極条約
ジオン公国政府と地球連邦政府による戦時条約で、名称は締結地の南極にちなむ。勝利を重ねていたジオン公国は休戦に持ち込むことで短期決着を望んでいたものの、調印直前に捕虜となっていたレビル将軍が脱出。ジオンの国力の限界を看破した「ジオンに兵なし」演説を実施した。
これにより南極条約は休戦条約から戦時条約に変更され、捕虜の取り扱いや大量破壊兵器の禁止、中立地域などへの攻撃禁止が条文に盛り込まれた。
3月1日、11日、18日:ジオン公国軍による第1次~第3次降下作戦
南極条約による戦争の早期終結に失敗したジオン軍は資源不足の拡大と戦況の好転を狙って3度にわたる地球侵攻作戦を実施、成功させた。第1次降下作戦と3日後のマ・クベ率いる部隊の降下作戦ではオデッサやバイコヌールなど南ロシアに降下して欧州方面の制圧を開始、第2次降下作戦では北米に降下した部隊によってキャリフォルニアベースの占領に成功したほか、第3次降下作戦ではアジア・アフリカに部隊が降下した。
いずれも降下作戦自体は成功したものの、61式戦車急造した対MS兵器鹵獲したザクなどを用いた連邦軍の抵抗や補給の限界もあってその後の占領地域の拡大は遅延・失敗した。
4月1日:地球連邦軍、V作戦およびビンソン計画を発動
ジオン軍への反攻戦力の確保として、モビルスーツ開発計画である「V作戦」と艦隊再建計画である「ビンソン計画」を発動。両者とも最終的に成功し、戦争後半の連邦軍による巻き返しの伏線となっていく。
9月18日:サイド7遭遇戦
V作戦の成果であるガンダムガンキャノンガンタンクの受領のためサイド7の1バンチに入港したホワイトベースをジオン軍のシャア・アズナブル少佐が捕捉、部下のデニムジーンがコロニー内でアムロ・レイと交戦し、公式記録上では史上初のモビルスーツ戦が発生する[1]
連邦軍はホワイトベースの乗員の大半や技術士官のテム・レイを失うもザクIIF型2機を撃破し、残存するモビルスーツと避難民を載せたホワイトベースの脱出に成功した。
9月20日~22日、23日:ホワイトベースがルナツーに入港、大気圏降下
ホワイトベースはシャアと交戦しながらも宇宙要塞ルナツーに到着、ジャブローに向け降下するが更なるシャアの攻撃によって妨害され、ジオン勢力圏である北米大陸に降下することとなった。
10月4日:ガルマ・ザビ大佐戦死
マチルダ・アジャン率いる輸送隊の補給を受けたホワイトベースによって北米でガルマ・ザビが戦死。シャアが彼を見殺しにした側面もある。
10月6日:サイド3にてガルマ・ザビ国葬
ガルマの父デキン・ソド・ザビは密葬を望んだものの、国威発揚を狙うジオン公国総帥ギレン・ザビによって国葬が実施され、ガルマ追悼演説を全地球規模で放送する。
11月7日~11月9日:オデッサ作戦
地球連邦軍による黒海沿岸の資源採掘地オデッサへの攻撃作戦。従来の陸上戦艦や戦車だけでなく陸戦型ジムなどのモビルスーツを投入した連邦軍が勝利し、司令官であったマ・クベは南極条約違反である水爆ミサイルによる攻撃に失敗した後宇宙に脱出、ユーリ・ケラーネなどの敗残兵は各地に撤退した。ガルマに続いてランバ・ラル黒い三連星をも撃破したホワイトベース隊はエルランの内通を発見、核ミサイルを無力化するなど大きな戦果をあげた。
11月30日:ジャブロー攻略戦
ホワイトベースはベルファスト基地での補給の後、ジャブローへと入港。だが、これを追跡していたマッド・アングラー隊によってジャブローの進入路が露見し、ジオン軍はキャリフォルニアベースからガウに搭載した大部隊を出撃させ、ジャブローを攻撃。同時にシャア率いる工作隊によるジムの製造工場への破壊工作が行われる。
しかしガンダムジムによる迎撃と防空網によってジオン軍攻略部隊は戦力の大半を撃破されて攻撃は失敗。これによってジオン軍の地上戦力がほぼ壊滅したことから主戦場は宇宙に移行し、ビンソン計画によって建造された大量の艦艇が宇宙に打ち上げられる。
12月5日:アフリカ、北米でのジオン公国軍掃討作戦が開始
これ以降、連邦軍はキャリフォルニアベースの奪還など残存部隊への攻勢を強め、地球上のジオン軍は宇宙への撤退を余儀なくされた。
12月14日~12月25日:ルビコン作戦クリスマス作戦
サイド6「リボー」に運び込まれた連邦軍の試作MS「ガンダムNT-1」の奪取、あるいは破壊を目的にサイクロプス隊がコロニーへ潜入。MS戦によってサイクロプス隊は全滅し、その最後の隊員であるバーナード・ワイズマンによってNT-1は撃破される。
12月24日:チェンバロ作戦発動、ソロモン攻略戦開始。
連邦軍が宇宙要塞ソロモンへ侵攻。アナベル・ガトーなどの奮戦もあったもののジムボールなどのMS戦力を多数有する連邦軍の物量に加え、ソーラ・システムによる熱攻撃によってジオン軍の敗北は決定的となり、ゼナ・ザビミネバ・ラオ・ザビを含むジオン将兵はグラナダへ脱出。ドズル・ザビビグ・ザムで殿を務め戦死。
一方で連邦軍も司令官であるティアンム中将が戦死するなど損害を被った。ソロモンは陥落後、「コンペイトウ」と改称され連邦軍のア・バオア・クー攻略の為の足がかりとなるが、これを妨害するエルメスによる攻撃を受け、被害を被った。
12月30日:ジオン公国軍がコロニーレーザー「ソーラ・レイ」を使用
サイド3のコロニー「マハル」を転用したソーラ・レイをギレンが使用、和平交渉に出向いていたデギン公王諸共レビル将軍を含む連邦軍艦隊の3分の1を壊滅させる。しかし、ホワイトベースを含む3分の2が健在であった為、再編された艦隊は引き続き星一号作戦に則りア・バオア・クーに進撃した。
12月31日:ア・バオア・クー攻略戦
再編された連邦軍艦隊はア・バオア・クーのN・Sフィールドを中心に攻撃を行い、Eフィールドにも別動隊を派遣する。当初はジオン軍が優勢であったが、キシリアによるギレン殺害によって指揮系統が混乱、その隙をついた連邦軍が要塞内に突入し、シャアが脱出しようとしたキシリアを殺害、要塞も陥落して組織的な戦闘が終結した。
連邦軍の包囲を抜けた艦隊が離脱。これが後年、デラーズ・フリートアクシズといったジオン残党組織を築くこととなる。
0080年1月1日:終戦協定締結
ダルシア・バハロ首相によってジオン公国は共和制に移行、月面都市グラナダにて地球連邦政府とジオン共和国政府の間に終戦協定が締結され、一年戦争は終結した。

登場作品[編集 | ソースを編集]

機動戦士ガンダム
初出作品。一年戦争の後半からの情勢を描いているが、具体的な日付については本編の作品内では語られておらず、その後の設定の変遷や追加、更には一年戦争を舞台とした新作品の公開を経て時系列が確立されていった。
機動戦士ガンダム 第08MS小隊
東南アジア戦線における戦いを描いた作品で、物語はガルマの国葬の時点から始まる。途中、主人公シロー・アマダの回想で、一年戦争初期に出身コロニーがGGガスで全滅する描写がある。
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
一年戦争終盤、サイド6「リボー」で極秘裏に建造されていたガンダムNT-1を巡る戦闘が描かれた。
機動戦士ガンダム MS IGLOO
ジオン側の視点からブリティッシュ作戦からア・バオア・クー攻防戦までが描かれ、その最中に運用された様々な試作兵器の末路を目の当たりにすることになる。ルウム戦役が映像作品で初めて映像化された作品でもある。
機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線
地球降下作戦からオデッサ作戦までの連邦軍の地上戦を描いており、各話主人公はそれぞれの戦闘で非業の死を遂げる事になる。
機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY
オデッサ作戦終了後に起きたEXAMを巡る戦いを描いており、キャリフォルニアベース攻略作戦が展開されている。
機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…
一年戦争末期、オーストラリアにおいて連邦軍が反抗作戦を実施。対するジオン側も宇宙への撤退と見せかけ、アフリカ方面への撤退作戦を展開した。
機動戦士ガンダム外伝 宇宙、閃光の果てに…
一年戦争末期、サラブレッド隊がチェンバロ作戦の支援を行っており、その後和平交渉を目的にダルシア・バハロをグラナダへ送り届ける役目を担っている。
ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079
キャリフォルニアベース占拠など地球降下作戦以降のジオン軍の地上戦が描かれている。
機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク
連邦編では連邦軍の派閥争いや暗部、ジオン編では地球降下作戦以降の戦いが描かれる。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
作者の安彦良和によって一年戦争開戦前の情勢なども描かれているが、一方で時系列などが本編と大幅に異なる。
機動戦士ガンダム サンダーボルト
第一部でサンダーボルト宙域における連邦軍とジオンの攻防戦が描かれている。なお、作者の太田垣康男氏によって、従来の一年戦争作品とはパラレルの関係にあることが明言されている。
機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー
戦闘に参加した両陣営の兵士たちの証言を元に制作されたドキュメンタリーという体裁でア・バオア・クー攻防戦の様々な側面が描いている。
魔法の少尉ブラスターマリ
Gの影忍

関連用語[編集 | ソースを編集]

一週間戦争
1月3日から1月10日までの一週間で行われた戦闘。ジオンの毒ガスやコロニー落としによって人類の半数が死亡した。
ブリティッシュ作戦
ジオンによるジャブローへのコロニー落とし作戦。ジャブローへのコロニー落着は連邦軍の抵抗によって失敗するが、これによって地球規模の被害が発生した。
ルウム戦役
サイド5ルウム周辺で起きた艦隊戦。数で劣るジオン軍が圧勝し、レビルを捕虜とする等の戦果を挙げた。
南極条約
大量破壊兵器の使用禁止や捕虜の取り扱いを定める戦時条約。本来はジオンによる事実上の降伏勧告による休戦協定だったはずだが、レビルの「ジオンに兵なし演説」により、戦時条約へと改められた。
地球侵攻作戦
ジオンによる地球占領作戦。全3次に渡って実行され、重力戦線を形成。地球の広範囲を実効支配する事に成功した。
サイド7遭遇戦
公式記録に残る、史上初のモビルスーツ同士による遭遇戦。アムロ・レイの初陣でもある。
オデッサ作戦
連邦軍によるオデッサの奪還作戦。地上における最大の激戦の一つ。
ジャブロー攻略戦
連邦軍のジャブローにジオン軍が侵入した事による攻防戦。
チェンバロ作戦
連邦艦隊による宇宙要塞ソロモンの攻略作戦。
ソーラ・レイ
スペースコロニーを兵器に転用したコロニーレーザー。ゲル・ドルバ照準で発射され、デギン、レビル両名諸共連邦艦隊を消滅させた。
星一号作戦
連邦軍によるア・バオア・クー攻略作戦。ソーラ・レイによる砲撃を免れた残存艦艇を再編し、実行された。
グラナダ条約
地球連邦政府とジオン共和国の間に締結された終戦協定。

リンク[編集 | ソースを編集]

脚注[編集 | ソースを編集]

  1. 非公式の戦闘ではあるが、『MS IGLOO 一年戦争秘録』第2話でセモベンテ隊のザクIIがザクIを騙し討ちで撃墜しており(5月9日)、現時点ではそちらが史上初のモビルスーツ戦となっている。