ラプラスの箱
ラプラスの箱(Box of Laplace)
ビスト財団が所有する、開放すれば地球連邦政府を転覆させると伝えられている存在。ビスト財団はこれを脅迫として利用して連邦政府から莫大な資金を引き出し、政府の裏の組織としての権力を作り上げた。
その正体は、宇宙世紀0001年、改暦セレモニーで公開されるはずだった宇宙世紀憲章を刻んだ石碑のオリジナルである。宇宙世紀元年、首相官邸ラプラスで行われたセレモニーは、テロによってその場にいた全員が死亡する大惨事となった。当時、テロの実行犯の一人であったサイアム・マーキスは、口封じの爆破を免れ、天文学的な偶然から宇宙に漂う石碑を発見。後に作られたレプリカの石碑にはない一節を発見した事で、これを「箱」として隠匿した。その一節とは、当時の各国代表たちのサインとともに"第七章 未来"と銘打たれた一文であり、「将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者たちを優先的に政府運営に参画させる」と記されたそれは、地球を離れコロニーに住まわんとする人々に向けた手向けであり、人類の未来への"祈り"だった。
石碑の存在は、連邦政府初代首相リカルド・マーセナスの暗殺が連邦政府の自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえたが、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、表向きは美術品輸送を業務とするビスト財団を作り上げていった。
しかし、ジオン・ズム・ダイクンによって提唱された「宇宙に出た人間はニュータイプへと進化しうる」というジオニズム思想は、奇しくもスペースノイドの権利と政治への優先的介入を明記した「箱」の碑文と重なり、連邦政府にとって"恐れ"となってしまったことで全てが狂い始める。もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼らはその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然であり、それを拒む連邦との間に衝突が起こることも明らかであった。
その後、既得権益を守りたい地球側と、権利を主張するコロニー側との対立が表面化し、一年戦争が勃発。戦争終結後、「箱」の条文に反した戦争を起こしてしまった連邦にとってそれは"呪い"となり、政府とビスト財団の関係はより深く、宇宙世紀憲章によって予期されていた新しい人類=ニュータイプは「箱」の存在ごとタブー視されることになる。そうして「箱」=宇宙世紀憲章の石碑という単純な真相が世に出ることのないまま、次第に事実を知る者も少なくなり、(政府にとっての)危険性だけが、ある種の都市伝説として伝わるのみとなった。
宇宙世紀0093年、総帥シャア・アズナブルの戦死と、それに伴う「シャアの反乱」の終結により、ネオ・ジオンは反連邦勢力としての力を失う。また、かつてジオン公国と名乗ったサイド3の自治権返還が7年後の宇宙世紀0100年に迫っていた。コールド・スリープで生きながらえていたサイアムはこれを期に、連邦政府の絶対的統治のもとに人類が逼塞する危機を憂えて財団本来の目的である「箱」の開放を決断。これを受けた現当主のカーディアス・ビストは「箱」をネオ・ジオン残党、通称「袖付き」に譲渡しようとした事から、ラプラス事変と呼ばれる抗争が勃発する事となった。
ラプラス事変最終盤、紆余曲折を経て「箱」はサイアムからジオンの遺児ミネバ・ラオ・ザビへと託され、その真実は世界に公表された。
登場作品
- 機動戦士ガンダムUC
- 初出作品。いつしかささやかれるようになった「解放されれば地球連邦政府による体制が崩壊する」という曰くつきの存在として序盤から物語の中心に据えられた。