ガエリオ・ボードウィン
ガエリオ・ボードウィン(Gaelio Bauduin)
- 登場作品:機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
- 声優:松風雅也
- 年齢:
- 身長:
- 所属:ギャラルホルン監査局
- 階級:特務三佐
- 主な搭乗機:シュヴァルべ・グレイズ(ガエリオ機)→ガンダム・キマリス→ガンダム・キマリストルーパー→ガンダム・ヴィダール→ガンダム・キマリスヴィダール
ギャラルホルンを統べる七大貴族のひとつであるボードウィン家の長男。マクギリス・ファリドと同じく監査局に属する特務三佐で、自らもMS戦闘に長けたエースパイロットである。
名門の出ゆえの強い身内意識と無自覚な差別意識の持ち主ではあるが認めた相手には情が濃く、ひょうきんながらまっすぐな性格である彼をプロデューサーの小川正和氏は一期後に「ガエリオはアニメでも貴重な存在、ガエリオに感情移入する人が多い方が日本は安泰」と絶賛している。
幼少期からの友人であるマクギリスと共に腐敗した組織の改革を目指していた。年の離れた妹のアルミリアがおり、長男ながら見合いを避けるガエリオより先に9歳のアルミリアがマクギリスと婚約することになった。政略結婚ではあるもののアルミリアはマクギリスに釣り合う女性となりたいと慕い、マクギリスも彼女を大切に想っているようである。ガエリオ自身もアルミリアを時にからかいはしても愛情はある様子。しかし妹が主役である婚約パーティの場で、同性としての気遣いから他の女性を抱くことをマクギリスに勧めるなど、貴族的価値観が根付いている。
火星圏の戦いで三日月に負けた悔しさもあってか鉄華団を倒すことに固執し、ボードウィン家の家宝であったガンダム・キマリスに自ら搭乗してアイン、カルタ達と共に追撃していった。 物語後半、議事堂を目指すクーデリア・藍那・バーンスタインと鉄華団を阻止しようと市街へと追撃するが、謎の男モンタークの駆るグリムゲルデと交戦。 そのさなか、モンターク(=マクギリス・ファリド)の目的はギャラルホルンの粛清および掌握であったことを聞かされ、騙されていた怒りと悲しみとともに問いただす。だが返ってきたのは、本来ギャラルホルンが行うべきではない作戦への参加もためらわないガエリオ自身もまた、マクギリスが打倒しようとした腐敗の一部であるという意志を示すものだった。
涙ながらにギャラルホルンの改革を夢見た想い、死に瀕してもマクギリスを想ったカルタ、そして妹アルミリアの幸せなどを訴え、奮闘するも虚しく無念の敗北。それにより公式記録では戦死し、埋葬された事になっていた。
しかし実は彼は生きており、第二期では仮面を被って「ヴィダール」と名乗りラスタルの元に身を寄せていた。言葉数は減るも時折ジュリエッタ・ジュリスには彼女のラスタルへ向けた真っ直ぐで妄信的な信頼に忠告することもあった。パイロット技量は一期の彼を上回り、ジュリエッタが「キレイ」と賞賛するほどの戦いぶりを見せるが、その際の相手は強敵とは言えない労働者モブキャラが駆る型落ちの作業用量産MS隊であるため、素の実力は測りがたい。二期におけるガエリオの戦闘能力の本領はあくまでType-Eと呼ばれるシステムによるものである。
これは一期で三本もの阿頼耶識を施されたアインの脳にMSの操作と阿頼耶識使用の負荷を任せることで、ガエリオ自身は自らの脳へのダメージを受けることなく、右半身の不随を増してまでモビルアーマーを倒した三日月並みの超強力な阿頼耶識が使えるというシステムである。作中描写でも設定的にも「自我のない脳を用いた同意のない人体実験」ではあるのだが、朗読劇にてガエリオは「戦いを望んでいるに違いないアインの脳を眠らせるのは俺のエゴ」と決断し、本編中でもType-Eを人であればこその力や想いによるものだと肯定的に語っている。
長らくアリアンロッド艦隊の一員としてマクギリスの動向を窺い真意を探っていたが、クーデターの際にマクギリスがガンダム・バエルの元に来た事で彼の望む物が力だと結論付け、マクギリス打倒を決意して再びガエリオ・ボードウィンとして表舞台に戻る事になる。
ガンダム・バエルを手中に収め、火星圏へと逃走したマクギリスを逆賊として追撃。激しい戦闘ののち生身で対峙した二人は銃を向け合い、引き金を引いた。マクギリスの最期の言葉については「言うな」と押さえて止めたために聞かずじまいであったが、ガエリオ自身はマクギリスを理解できたと感じている様子。友情を実感できたことで裏切られたわだかまりも消えたのか、すぐ後に阿頼耶識の酷使によってアイン脳が焼き切れたType-Eシステムへと清々しい微笑みを向けていた。
動乱の終結後には車椅子生活を送っている。これは一期エドモントンでのマクギリス戦で重傷を負って歩行不可能な身体になり、首の後ろにtype-Eとの接続用兼阿頼耶識による歩行補助デバイスを埋め込んだことによる恩恵を受けていたのを、二期での決着後に「戦わないという決意」によって自ら有機デバイスを除去したことによるものだという。そうした彼の表情は険が取れて一期の頃のように明るく、車椅子を押すジュリエッタにもっと肉付きがある方が好みだと語り、にこやかに食事デートに誘っている。
ちなみに一期後のガエリオの生存がマクギリスの敗北の大きな要因であると公式インタビューや視聴者間などでも語られるが、死亡したと思われていた彼がどのように助かったかは明らかになっていない。これを果たすには「周囲に敵方の人々が通る場所で停止したガンダムキマリス・キマリスの中で重傷を負ったガエリオ・大都市の中で停止した巨大MSに生命維持を任せていたアインやその脳」を、マクギリスや鉄華団や都市の人々に気づかれないようにアリアンロッドのラスタル(二期登場キャラ)が確保する、という至難の業が必要となる。
なおガエリオは初期案では1期で退場する予定であったが、シリーズ構成の岡田麿里氏がガエリオの声優であった松風氏の人柄を気に入ったため予定を変更して続投することになったと明かされている。そのため上記のものを含めて大なり小なり不整合が発生してしまっている。
登場作品と役柄
- 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
- 当初は火星支局への査察に赴いたマクギリスの衛士として同行。支局長コーラル・コンラッドの不正を紐解いていく中で、偶然にも三日月達と遭遇(このときは自身の運転する車がクッキー達を撥ねそうになったため、激昂した三日月に首根っこを掴み上げられる羽目になった)。直後の火星軌道上の戦闘では初めて刃を交える事になった。乗機は、当初は専用のランスユニットを装備した紫色のシュヴァルべ・グレイズだったが三日月には全く歯が立たずに終わる。後にボードウィン家の蔵に眠っていたガンダム・キマリスに乗り換えると、ガンダム・バルバトスに対して性能相性が良いようで、互角の戦闘を披露した。
人間関係
ギャラルホルン
- マクギリス・ファリド
- 幼少期からの親友。元はファリド家に迎えられた妾腹の子であったが、そんなマクギリスを毅然と認めたカルタの影響もあってか出会った頃から対等な付き合いをしてきている。共にギャラルホルンに属してからは妹アルミリアとの婚約の事もあり、良好な関係。しかしガエリオにとっては幼少から劣等感と裏腹の憧れの対象でもあり、優男の仮面によって人望も備えたマクギリスが仮面を外して本音で話し、共に理想を語り合える親友として認められることに喜びを感じてもいた。一期では「マクギリスはガエリオのことが実は嫌い」という設定もあったようで、ガエリオ声優の松風氏が担当キャラが死ぬ可能性を危惧して親友関係を主張していくことにした、というエピソードが明かされている。
- アイン・ダルトン
- 鉄華団追撃任務に際して、アインの志願に応えたマクギリスがガエリオの新たな部下として配属させたパイロット。鉄火団との戦いで戦死したクランクを強く慕い仇を取るために戦う姿勢に共感し自身がガンダムキマリスに乗り換えた際には自分のシュバルベ・グレイズを譲るなどして強い信頼を結ぶこととなる。鉄華団との戦闘でアインが自分を庇って意識不明の重体に陥った際には彼を救うために奔走。医師がアインの生存に不可欠だとした(地球で差別対象である義肢や人工臓器などの)機械化処置を「機械の化け物」だと拒否するとともに、アインを戦える身体に戻せと要求。そこでなされたマクギリスの進言によって、禁忌とされる阿頼耶識システムの投入を決意した。
- カルタ・イシュー
- ギャラルホルンの名家であるイシュー家の長女にして、マクギリスと同じく幼馴染の1人(付き合いに関してはマクギリスよりも長い)。周囲に流されず、自分が認めた他者に対等に接するといった共通点があり、ガエリオにとっては憎まれ口を叩く事もあり、ある種の苦手意識を持っていた節もあったがよき親友でもある。アインとカルタの死は、後々までガエリオが戦う理由となっていた。
- イズナリオ・ファリド
- マクギリスの義父にして地球本部長。
- ラスタル・エリオン
- セブンスターズのエリオン家当主。アリアンロッド艦隊の司令官で利害の一致から彼の側近となり、ヴィダールの素性を知る数少ない相手。マクギリスの真意を知った後は、ラスタルと共に戦う事になる。一期での怪我の治療やキマリスの確保・改修や脳阿頼耶識の開発など、二期でのガエリオ勝利の全てを担保する存在とも言える。逆にラスタルにとっても二期開始時点でマクギリスの裏切りを知るガエリオを確保できていることこそが多大なアドバンテージになっている。そのため形式的にはラスタルの方が目上なのだが、ガエリオにとってはあくまでも対等の立場。
- ジュリエッタ・ジュリス
- アリアンロッド艦隊所属のパイロット。当初は素顔を隠していたガエリオの事を不審に思っていたが、その戦いを見て認められる。自身を見出したラスタルに対して絶対的な忠誠を誓う姿に、ガエリオにかつてのアインを思い出させる。三日月の強さに恐怖して阿頼耶識は使わず人間として強くなると決意するが、アイン脳の戦闘利用は人間の力だとするガエリオの意見には納得している。気心の知れた信頼関係を結び、成長後にはデートの誘いに応えて肉を所望した。
- ヤマジン・トーカ
- アリアンロッド艦隊所属の整備兵。ガンダム・ヴィダールを初めとした機密性の高い機体の整備を任されている。
- イオク・クジャン
- セブンスターズのクジャン家当主にてアリアンロッド艦隊第二艦隊司令官。
- 同じ七星の若者ではあるが、カルタやマクギリスとは違いあまり交流がなかったのか劇中ではお互い事務的なやり取りに終始し、ヴィダールの正体が明らかになった後も確執も関係描写もほとんどない。同じ七星の若者として幼なじみであるはずだがそういった会話もなかった。また、イオクが火星に行く事になったのは元はといえば七星勲章に関するヴィダール(ガエリオ)の何気ない発言が発端だが、火星でのMAが起こした騒動の際にもガエリオとは同じ場所にいなかった。
- 石動・カミーチェ
- マクギリスの目指す未来に夢を見て付き従う部下。マクギリスは部下の事すら道具にしか思っていない男だというガエリオの主張に対して、石動はそのような感傷的な関係をマクギリスに求めていないと反論した。マクギリスの語る理想に夢を見た者同士ではあったが、裏切られたことでマクギリスと決別しセブンスターズとしての自分を選んだガエリオと冷遇されるコロニー出身者として最後までマクギリスの未来に夢を見ていた彼とは分かり合う事は無かった。
鉄華団
- 三日月・オーガス
- 自身にとって因縁浅からぬ宿敵。火星において、グリフォン姉妹の件で軽率な行動をした三日月に首を締め上げられた上、ロクな謝罪をされなかったこと(三日月が謝り慣れていないこともあるが)に端を発し、軌道上での戦いは回線越しの声からお互いに相手の正体を看破することもあった。
しかし出会う度に「チョコレートの隣の人」だの「ガリガリ」だの好き放題に呼ばれており、名前をまともに覚えて貰えない模様。一期では三日月の阿頼耶識を見たことで嘔吐し、アインが阿頼耶識を施したのちも本物で三日月たちの阿頼耶識をまがいものだと扱っていた。だが二期にてギャラルホルンの本部で交戦した際には、自らも阿頼耶識システムを用いたことで心境の変化があったのか、阿頼耶識の施術を受けている彼らを唾棄すべき存在だとした事を一応謝罪している。
家族
- アルミリア・ボードウィン
- 年の離れた幼い妹。マクギリスに恋焦がれており、後に婚約が成された。二期では会話の機会はなく、ガエリオにとっても憎き仇の元で暮らしていることになるが、お互いへの言及もほとんどないままだった。最終回では、マクギリスの事を殺したのはガエリオだということも知っているはずだが、そもそも出番がない為マクギリス事件後はどういう関係かも不明である。
- ガルス・ボードウィン
- 父親。ボードウィン家の現当主。
火星
- クッキー・グリフォン、クラッカ・グリフォン
- 火星で車を運転中に飛び出してきた彼女たちの安否を確認しに行った際、その場に居合わせた三日月に問答無用で首を絞められる羽目に。ある意味、三日月との因縁を作ってくれた姉妹である。
名台詞
- 「そのクソ生意気な声、あの時のガキか!?」
- 火星軌道上で三日月と邂逅した時の台詞。思いもよらない相手であったが、この戦闘を期に幾度となく相見えていく事になる。
搭乗機体・関連機体
- シュヴァルべ・グレイズ(ガエリオ機)
- 当初の搭乗機。自身のスタイルに合わせてランスユニットを装備するなど専用機として改修されている。
- ガンダム・キマリス
- ボードウィン家から投入したガンダム・フレーム機。
- ガンダム・キマリストルーパー
- キマリスを地上様に改修した形態。窮地に陥ったカルタの救援やエドモントンでの戦闘において使用されている。
- ガンダム・ヴィダール
- 仮面の男ヴィダールを名乗っていた時に搭乗した機体。戦死したアインの脳を介した疑似阿頼耶識を搭載している。
- ガンダム・キマリスヴィダール
- ガンダムヴィダールの偽装を解き、本来の姿を取り戻した機体。