阿頼耶識システム
阿頼耶識システム(Alaya-vijnana System)
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に登場する技術。モビルスーツやモビルワーカー、艦船などの操縦系として用いられる有機リンクデバイスシステム。通称は「阿頼耶識」。
宇宙作業機械向けに開発されたシステムを軍事転用したもので、パイロットの脊髄に「ピアス」と呼ばれる接続機器を外科手術によって埋め込み、これと操縦席側の端子を接続することで機体とパイロットをナノマシンを介して直結させる。これによってパイロットの脳に疑似的に空間認識を司る器官を形成し、機体を自身の体の様に自在に動かす事が可能になる[1]他、コンピューターによる機械的モーションプログラムに依らない挙動を行うため一目で分かる程柔軟かつ機敏な動きをとる。
「ピアス」の埋め込み施術は複数回行う事ができ、施術する毎に交信情報量を増やす事でより高い効果を発揮するが可能[2]。グレイズ・アインの様に「全ての操縦作業を脳内思考制御で完結させる」事も可能だが一般的なMS・MWなどで採用されている物はコクピットモニターや操縦桿・ペダルなどを併用する物で阿頼耶識はあくまでそれ等では間に合わないレベルの管制や操縦補佐を行う物である。
厄祭戦当時はほとんどのモビルスーツの操縦系に採用されていたと思われるが、その強大過ぎる施術効果を危険視したギャラルホルンによって厄祭戦以降のP.D.320年代では非人道的なシステムとして義手などの身体の機械化とともに禁止されており、特に地球圏出身者は被術者を「ヒゲ付き[3]の宇宙ネズミ」と蔑む傾向にあり、またグレイズ・フレームやテイワズ・フレームといった戦後開発のMSはシステムの対応を前提としない設計となっている。
しかし実際にはギャラルホルンでも極秘裏に研究を続けており、重傷を負ったアイン・ダルトンにグレイズ・アイン用システムを用いた延命(実質的な生体CPU化)が行われているほか、その際のノウハウを基に復元された厄祭戦当時の仕様の物をマクギリス・ファリドが自身に施術し、ガエリオ・ボードウィンが阿頼耶識システムとアインの脳を用いた『阿頼耶識システムTypeE』を用いている。
前述の通りギャラルホルンによって非合法化されたため技術や機材を完全な形で入手することは困難なものの、圏外圏を中心にヒューマンデブリや少年兵に対する非合法かつ不完全な施術が横行しており、失敗して身体不随が残る確率や施術時点での死亡率も高い[4]。また、脊髄にナノマシンを定着させる必要から施術できるのは成長期中の10代前半までとなる。施術に失敗したが命は取り留め障害者となった「欠陥品」の子供達は元居たスラムなどに返され、ほぼ全員がそのまま死亡するケースが跡を絶たない。
操縦の簡素なモビルワーカーならともかくモビルスーツや艦船の操縦に用いた場合管制情報量の多さからパイロットの脳への負担が大きく、鉄華団の機体はリミッターを設けることで対応している。しかしこれは任意に解除でき、三日月はグレイズ・アインやハシュマルとの戦闘でリミッターを外したために自身の体に障害が残り、最終的にはバルバトスと繋がっていないと半身不随になる[5]という重い障害を負っている。同様に、三日月用に機体との情報通信量を大幅に引き上げたバルバトスに搭乗したダンテや2隻の強襲装甲艦を操艦したユージンが失神したり、阿頼耶識を用いた他の鉄華団の面々が鼻血を出す場面もある。
また、「機体とパイロットが直結している」という状態はパイロット自身の意思でしか解除できず、強引に動かすこともできないため、パイロットが意識を失うと機体との相互リンク解除を含む一切の操作が不可能になる。
阿頼耶識システムType-E(Alaya-vijnana System Type-E)
ガンダム・ヴィダールやそれを改装したガンダム・キマリスヴィダールに搭載されている阿頼耶識システムの応用型。疑似阿頼耶識システムとも呼ばれる。
搭乗者であるガエリオの体をアイン・ダルトンの脳を搭載した機体が強制的に操作することで、パイロットへの負担を抑えつつ阿頼耶識と同等の機動を可能としている。しかし阿頼耶識より劣る点もあり、敵をフレーミングし指定するのはパイロットであるため敵味方が入り乱れる混戦下ではフレーミングが困難になりシステムが混乱をきたす危険がある為味方との連携作戦が採り辛いという点が挙げられる。ゆえにこのシステムは真の強敵との1対1の戦いでの状況でこそ真価を発揮するシステムと言える。システム起動時はパイロットのシートの頭部左右に設置された赤いランプが展開・発光する。また重傷を負っていたガエリオの身体機能の補助にも用いられるとされているが、最終的にガンダム・バエルとの戦闘でシステムの出力を上げ過負荷がかかったためアインの脳が焼き切れ使用不能となった。ヴィダール(=ガエリオ)の正体にも繋がるうえ倫理的な反発を呼び起こしかねないものであり、その内容は機体自体の素性とともにアリアンロッドでもかなりレベルの高い機密とされている。「Type-E」はアインの頭文字からと思われる。
登場作品
- 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
- 作中のCGSや鉄華団に所属する少年兵、ブルワーズ等その他の組織に所属するヒューマンデブリなどのパイロットが強制的に施術されており、ギャラルホルンによる情報操作の設定も相まって敵味方から忌み嫌われる技術として描かれている。絶大な戦闘力に惹かれたハッシュやクーデリアが施術を希望することもあったが、リスクなどから鉄華団の面々に強硬に反対されており、施術者たちもギャラルホルンや地球圏の人間から侮蔑的な言葉をかけられている。
関連用語
リンク
脚注
- ↑ 例として、全くモビルスーツの操縦訓練を受けていなかった三日月がいきなりガンダム・バルバトスで実戦をこなしたり、昭弘がガンダム・グシオンリベイク搭乗時300mm滑腔砲の大気の影響を考慮しなければいけない重力下での長距離砲撃時の弾着修正を文字通り「感覚で」こなすなど、練度に劣るパイロットでも熟練した正規兵並みの作戦行動が可能となる。
- ↑ 三日月は3回、明弘は2回の施術を受けたとされるが、3つのピアス装着でようやく「厄祭戦当時の阿頼耶識システムと同等の性能である」との事。
- ↑ 施術者のピアスを鼠のヒゲに見立てたもの。
- ↑ この辺りは圏外圏での施術者が碌な医療知識や設備も無しに最低限の設備や技術のみで行っているのも失敗率を高めている理由の一つである。
- ↑ ただし一般の病気・傷害による神経断裂などの様に動かない部分の肉体が痩せ衰えたり壊死したりするなどの障害は生じていない為あくまで「随意での身体制御が利かなくなる」だけである。