シン・アスカ

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シン・アスカ(Shinn Asuka)

機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の主人公。キラ・ヤマトアスラン・ザラに続く「機動戦士ガンダムSEED」の「第3の主人公」に位置する。

人種はコーディネイターであり、人種を問わず、法さえ守れれば国民となれるオーブ連合首長国で平和に暮らしていた。両親と妹の4人家族。 彼自身述懐しているように、当時は「遠い世界の戦争の話より、テレビゲームの発売日が気になるような」普通の少年だった。コーディネーターの意識としてはあくまでも「病気などに悩まされるよりは生まれる前から耐性があればいい」というレベルでしか考えておらず、ナチュラルへの特権意識や敵愾心は持っていなかったようだ。

しかしC.E.71年の地球連合軍によるオーブ侵攻で、家族と共に避難艇に向かっている最中、妹マユの落とした携帯を拾おうと家族から離れた瞬間にフリーダムカラミティ両機の戦闘に巻き込まれて家族を失う。(但し、フリーダムとカラミティの戦闘シーンの後に起きた爆風で家族は死んでいるだけで、両機の戦闘による爆発かは不明)。その時の絶望と哀しみ、戦争の諸悪への激しい怒りが、彼の行動の機軸となる。
家族を失った後は、トダカの勧めでプラントへ移住した。家族を失い、戦争を憎む執念が原動力となり、優秀な成績でアカデミーを卒業。晴れてザフト軍に入隊、エリート集団「赤服」の一員となる。そして、新型モビルスーツインパルスを駆り、活躍する事になる。

パイロットとしての技量は、エリートとはいえまだ新米ということもあり、アスランやキラ、イザークなど前作からのキャラの比べると劣り、劇中序盤はさしたる戦果を挙げられなかった。しかし中盤にS.E.E.D.能力が覚醒して以降は目覚ましい成長を遂げる。特に目覚しい戦果としては、無敵を誇っていたフリーダムをインパルスのドッキングシステムを利用して撃破した事や、デストロイとの戦闘で素早く反応して格闘戦に持ち込み、瞬く間に4機を撃破した事などが挙げられる。
射撃よりは格闘を好み、高速一撃離脱戦重視のデスティニーはシンが格闘戦が得意というデータに基づき調整された。
拳銃射撃は日頃からレイと共に訓練しているが、最終的に銃口を向ける相手が居なかったので生かされなかった。

ガンダムシリーズではOVAを除けば最初から軍人である唯一の主人公である。しかし終盤においては、軍人であり続けた事が彼の悲劇だったと言え、また歴代のガンダム主人公達が戦いの中で多くの人間に出会って成長していった事に比べると、彼自身は良き大人との出会いに恵まれず、人間的な成長の描写が乏しかったことが挙げられる

彼の「主人公」としての扱いは各メディアによって大きく違い、TV版、漫画版、小説版のいずれの作品も最後は敗北という結末を迎えるものの、そこに至るまでの描写や表現が異なっている。

ボンボン版(執筆した作家の高山瑞穂から高山版とも言われる)の評価は特に高く、シン・アスカを最後の最後まで主人公として描いた本作は高山氏が、「作家生命を賭けてでも描き切る」とまで発言したという逸話があるほど。 かつての自分を投影し、戦いをやめさせようとするアスランに対し、それを理解しながらも自分自身の信念を持って対峙する。激闘の末敗れたシンは、それでも生きている限りは前に進み続けるという、敗北の苦味と未来へ歩み行く希望を含ませて終わる。

小説版でも全体的に原作では補完し切れなかった部分を改善されており、ステラを助ける為に連合へ送った事で起きたデストロイの被害(ステラを返さなかったとしても、スティングが搭乗したであろうが)、アスランを撃墜した後の精神の不安定さ、そして最後のレイとの会話等、様々な部分を書かれている。

TV版では、中盤以降は物騒な発言や、自己中心的・身勝手な行動がだんだんと増えていき、視聴者に悪い印象を与えていくようになっていく。一部では「ストーリーの都合で、視聴者に嫌われるような脚本になったのではないか?」と推察されている。 家族を失った事による怒りや憎しみによる「負の要素」からの人間関係のもつれ・視野狭窄故に周囲が見えてない事などから、視聴者には主人公として悪いイメージが付きまとった。これは彼の人間的未熟さに起因するものではあるが、残念ながらそれを導いてやれる人物に恵まれなかった。

前作の主人公のキラやアスランは「機動戦士ガンダムSEED」中盤からお互い健全な人間関係を築き上げたとのは対照的に、終止、戦いから開放されず、苦しい立場に置かれた事により、彼らに比べると健全なイメージを作り上げた主人公としての立場を無くした。またロボットアニメという世界は結局、主役ロボットに主人公が活躍してこそ視聴者も安心して見られるが、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」ではシンの主人公としてのイメージ、ラストのシンとデスティニーガンダムの敗退の描写が一層、主人公としての立場をなくしてしまった事が一番の要因である。TV放送時から番組構成に問題が取り上げられたのだが、その割を食ったのがシンである事は異論はないだろう。

「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の監督、福田己津央氏によれば「キラ、アスラン、シン」の主人公3者でストーリーを動かしたかったのだが、先に述べた通りシンの主人公としての扱い、デスティニーストライクフリーダムを両者、主役扱いしたいスポンサー・バンダイの販売に対する思惑等から、主人公が上手く機能しなかった事が上げられる。スペシャルエディションではシンとキラにソフトに接せるアスランが主人公として機能したのも、シンとキラとの主人公の格差の是非を取り上げたかったのでないかと考えられる。

放送当時、シンの担当声優の鈴村氏はキラやアスランら、シンが反目するキャラクターを好きな視聴者から「キラ(アスラン)の言う事を聞かないから嫌い」等の批判の手紙が送られてきたということもあってか、「シンの事が嫌いなら嫌いでいいです。でも、キラやアスランの敵だから嫌いって思ってほしくないです(意訳)」と言っており、シンは嫌われてもしょうがないキャラクターである事は理解しながらも、キラやアスランの敵だからという理由で嫌われる事に疑念を感じていた様子が見られる。

登場作品と役柄

機動戦士ガンダムSEED DESTINY

人間関係

ルナマリア・ホーク
士官学校からの友人。シンにとっては数少ない、うち解け合う関係に。
レイ・ザ・バレル
士官学校からの友人。のちにシンに自分の過去を打ち明ける。
アスラン・ザラ
作戦指揮官で、上官。尊敬しつつもそりが合わず、常に衝突。後に引導を渡される形となってしまった。
ステラ・ルーシェ
ファントムペイン所属のパイロットでエクステンデッドの少女。第1話でシンが偶然胸を触ってしまう。その後海で溺れた際、助けられたことが切っ掛けで惹かれ合う。肘鉄や頬を酷く引っ掻かれるなど散々だったが、シンはステラに妹のマユの姿を見ていたからである。このシチュエーションはアスランとカガリが初めて出会った時と似ている。最後はキラによって乗機を破壊され、爆発に巻き込まれ死亡する。後に全てを失ったシンに魂となって語りかけた。
なお、前作『SEEED』では魂となってキラに語りかけたフレイ・アルスターとの対比となっている。敗れたシンにはステラの声が届いていたが、勝利するキラにはフレイの声が届いていなかったという興味深い違いがある。。
キラ・ヤマト
フリーダムガンダムのパイロットで、シンにとってはステラの仇。ただ、キラ本人が仇と知るのは「機動戦士ガンダムSEED DESTINY FINAL PLUS ~選ばれた未来~」の中。
キラが「一緒に戦おう」と語りかけると、シンは涙ながらに「はい」と答え、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」は本当のエンディングを迎えるのであった(ただし、この描写が更なるアンチを作る原因となってしまった)。
ちなみにこのエピローグ、シン役の鈴村健一氏がシンにやってほしくない事として挙げていた事だったりする。
マユ・アスカ
実妹で、携帯電話を取りにいくシンの行動が結果的に助かってしまうという悲劇を生んでしまう。
トダカ
オーブ軍一佐。オーブ解放戦の時に家族を失ったばかりのシンを保護し、プラントへの移住を進めた。しかし、後のクレタ島沖海戦の時に皮肉にもシンの手によって命を失っている。
ハイネ・ヴェステンフルス
上官。ハイネの性格によりアスランと少しは打ち解けるきっかけとなるが、ボスポラス海峡での戦闘で戦死している。

名台詞

「何でこんな事…また戦争がしたいのか、アンタ達は!?」
記念すべき1話で登場。1話における彼の出番自体が少なく、番組終了間際に飛び出た台詞から各所で話題を呼んだ。
「さすが奇麗事はアスハのお家芸だな!」」
奇麗事を言い続けるカガリに対し発言。しかし、普通に考えれば元オーブ国民とはいえ、今はザフト軍人であるシンが他国のトップであるカガリに対して罵声を浴びせるというのは国際的に考えて大問題なのだが、なぜか罰せられることはなく、その後もシンはカガリに対して罵声やわざと肩をぶつけるなどの問題行為をするが、まったく問題になっていない。
「俺を助けろ!この野郎!とか…」
墜落寸前のアスランを助けた際に。他人を頼ろうとせず、自分で抱え込みすぎるアスランに「こんな時くらい人を頼ってくれ」という彼なりの思いやり。
「あの人が可哀想だよ!」
またしてもカガリに。ユニウスセブンの破壊を成功させ、帰艦したアスランをねぎらったつもりのカガリだったが、ユニウスセブンを落としたのはパトリック・ザラの言葉を信じていたコーディネイターで、多くの破片は地上に降り注ぎ、少なくない被害をもたらした。それによって悲しむ人々、コーディネーターへの憎悪を募らすことを危惧するアスランに、そこまで気が回らなかったカガリの賞賛はむしろ重荷になってしまっていた。それを咎めての言葉。
「いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…」
オーブに降りた際のキラとの邂逅での台詞。
「守るって言ったのに…俺、守るって言ったのに…!ステラ…ごめん…!」
死亡したステラを葬った別れの際に。失ってしまったものを守れるように軍人になった彼が、再び守れなかった無力感から涙を流しながら詫びる。鈴村氏迫真の演技が胸を打つ。その後、形相が変わってしまうほどの憎悪にゆがんだシンの顔つきに驚いた視聴者は少なくないという。
「アンタは俺が討つんだ…今日、ここで!」
エンジェルダウン作戦時にキラに対して。フリーダムの戦闘データから徹底的にフリーダムの戦い方を研究した上でインパルスの性能を活かしきり、フリーダムを撃墜する。
「ク…ハハハ…やった…ステラ…やっと…これで…ハハハハハハ…」
フリーダムを撃墜し、執念の勝利に。それでも何も得られない虚しい笑い声が哀しい。フリーダムの爆発を至近距離で受けたインパルスは全壊一歩手前という被害を被った。あるいはシンは刺し違える覚悟で挑んでいたのだろう。アスランはシンのこのような「命を捨てる復讐」をやめさせようとしたが・・・。この後、シンは無敵のフリーダムを撃墜したスーパーエースとして自信を膨張させ「増長」してゆく。
「アンタって人はぁぁぁぁ!」
裏切ったアスランに対する一言。彼を象徴する台詞。
「アンタが悪いんだ、アンタが……アンタが裏切るから!」
アスランとレイの双方からの説得に耐えきれず、S.E.E.D.を覚醒させた直後の台詞。
「こんな事をする…こんな事をする奴ら…ロゴス!許すもんかぁぁぁ!」
ヘブンズベースでのデストロイとの戦闘時の台詞。対艦刀でデストロイを一刀両断する等、シンの気迫を感じられる。
「お前達のようなのがいるから…世界はぁ!」
上記と同じく、パルマフィオキーナで2機目のデストロイを撃墜する際の台詞。
「あんたらの理想ってやつで、戦争が止められるのか!?」
 「戦争のない世界以上に 幸せな世界なんて……あるはずがないっ!!」
ボンボン版の台詞。理想を追求するアスランに放った一言。
「これがデスティニーの力だ!」
ボンボン版のアスランとの最終戦にて。単機でジャスティスのミーティアや右腕を破壊しアスランを追い詰める等、嘘偽りのない戦果を挙げている。
「 もう俺は選んだんだ!!この道を!!なら行くしかないじゃないかっ!!」
 「あんたが正しいって言うのなら!俺に勝ってみせろ!」
上記と同じボンボン版のアスランとの最終戦時の台詞。パルマフィオキーナでジャスティスの右腕を破壊する。
「アスラン…あんた、やっぱ強いや…」
ボンボン版での最終決戦でアスランに敗れた際の台詞。
「でもっ……生きろ!レイ!」
「言ったじゃないか、前に!どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろうってっ!」
小説版より。自分と同じ短い寿命を持つステラに対してレイが言った言葉であり、その言葉をシンが彼に言う印象深い場面の一つ。
「なんで議長までチェックしてるんだぁぁぁ!」
フレッツCMより。デュランダルにCMで「CMの方が喋ってる」と揶揄される。あながち間違っていない?
「そんなの、ただの言葉じゃないか。誰がそんなことを決めたんだ!
失っている過去を守るのは間違いで、今ある現実を守ることだけが正義なのかよ!
それを決めていいのはあんたじゃない!オレなんじゃないのか!
オレは決めたんだ!過去を放ってはおかない!決着をつけるんだ!
ガンダム無双2より。アスランとの掛け合いで「過去に囚われたまま戦うのはやめろ、そんなことをしても何も戻りはしない」と諭された際に答えて。失った大切な過去があるからこそ、未来のために戦うのだという決意。間違いなくガンダムシリーズ主人公のセリフ。これがアニメ本編で発揮されていれば・・・。
「大切なものを守るために戦う、それでいいんだ。
でも、だからって、俺も戦わないわけには行かないんだ!」
ガンダム無双2より。キラの戦う理由を理解しながらも、真正面から自分の信念をぶつけて。
「やめてくれよ、ルナ。もうエースの力はいいんだ。必要ない。
スーパーエースなんて、もう捨てていい過去だって、決めたんだ。オレ自身で。」
シンが過去に囚われているのではなく、悲しみを乗り越えて未来に向かって行くという人間的な成長が見て取れるセリフ。

余談

  • シンを演じた鈴村健一氏は2011年8月にルナマリア役の坂本真綾氏と結婚している。

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