ムーン・ムーン

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ムーン・ムーン (Moon Moon) 

サイド1付近の隕石群の中にあるバナール球型スペースコロニー。外界との接触を絶ち、機械文明を否定して自然と共存する事を理想とする「光族」が居住している。

コロニーの本来の名称は「バナール1」であり、元々は宇宙世紀の開闢以前、サイド建設の前線基地として建造された。また、それと同時に人類が長期の宇宙生活に耐え得るかどうかを実証する実験棟としての側面も持っていた。

サイド建設が軌道に乗り、当初の目的を果たした後は、それ自体がサイド建設のための資材として解体される予定であったが、カミーグ・リゾート社がコロニーを買い取り、施設そのものを遊園地とするべく改修が加えられた。だが、バナール型コロニーの放射線対策は十分ではなく、恒久的使用には耐えられない[1]という地球連邦政府の判断により売却は取り消され、アミューズメント施設やホテルの建築[2]などで膨大なコストを投入したカミーグ社は、連邦政府との数年間に渡る法廷抗争に突入する。

そんな折、ラプラス事件によって連邦が強権体質を強めていた頃、容赦のない摘発と弾圧によって反体制派は骨抜きにされ、その一部が自由と非暴力、自然回帰を唱えるカウンターカルチャー(ヒッピー)の様相を呈していた。連邦政府との裁判が長期化する中、カミーグ社はこのヒッピーを利用する事を思いつき、リゾート開発が凍結され常駐していた建設作業員達も帰国して無人に等しかったバナール1の入植権を二束三文で売り払い[3]、裁判の泥沼化を恐れた連邦政府が多額の賠償金をカミーグ社に支払う事で裁判は幕を閉じた。

一方、バナール1に入植した千人単位のヒッピーらは、自然回帰を唱える理想的な環境を手に入れ、建造途中だったファンタジーランドの中で家や畑を作り、複数のコミューンを統合して自分たちだけの理想郷「ムーン・ムーン」を作り上げていった。

コロニー単独で生活の全てを賄う事は出来ず、そのために外に通じる第三者としてメディシンと呼ばれる反社会的勢力の存在があった。カミーグ社にヒッピーという「善意の第三者」を使った土地の不法占拠を提案したのもその一派であったとされ、裁判後はメディシンによってコロニーは無人化され、カミーグ社はムーン・ムーンを連邦に引き渡す予定であったが、司法の手が及ばない自分たちだけの土地が手に入った者達は、やがて特定禁輸植物であるハイ・コカイン(ハイコカ)の栽培に利用するようになり、ムーン・ムーンはその見返りとして必要物資をメディシンから得ていた。この事実は光族の大半には伏せられており、メディシンとの交易は罪人としてコロニーの地下に幽閉された「アルツトの民」によって行われている。

ハイコカには強化人間の開発に必要な向精神性物質「ベタナール」が含まれており、ムーン・ムーンの住人達は発酵し、水源に混ざったハイコカの成分を非常に緩やかにではあるが接種し続け、そんな環境に順応して百年近く世代を重ねてきた結果、生まれつき精神感応力が高められた潜在的ニュータイプとしての性質が備わっている。宇宙世紀0091年、リュース・クランゲル率いるネオ・ジオン残党一派は住民たちの性質に目をつけ、住民を懐柔するべくムーン・ムーンに接近。これに端を発した騒乱で、それまで閉ざされて来たムーン・ムーンの「闇」が住民達の白日に晒される事になった。

その後もムーン・ムーンは存続し続け、宇宙世紀0153年にはザンスカール戦争のどさくさに紛れて地球の土地を入手。自然回帰志向を実現させるが、地球環境が想像以上に過酷であった事から、海底都市「リュグージョ」に引きこもる者が大半を占める事になった。

登場作品 

機動戦士ガンダムΖΖ
初登場作品。第14~15話の舞台となり、エンドラの追撃から逃れるためアーガマが入港してきたのを機にサラサ達光族とラサラ達レジスタンスの対立、そしてアーガマ組とエンドラ組の駆け引きが繰り広げられた。
機動戦士ムーンガンダム
本作の主な舞台として登場。それに伴って、コロニーが成立した経緯や歴史、文化などが設定された。
機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST
ザンスカール戦争後、地球へ移住した事が語られており、木星共和国のタカ派と取引して宇宙へ上がろうとする支配者層と、地球に残留を希望する「地表同盟」との内乱の様子が描かれている。

住民 

ムーン家 

サラサ・ムーン
ラサラ・ムーン
エルド・ムーン
ヤズカ・ムーン

リヒト家 

リナート・リヒト
アルフォンソ・リヒト
ニルダ・リヒト

その他 

ロオル
ユッタ・カーシム
カレル・カーシム
カーリナ・カーシム
クレト・カーシム
サキ・メントー
マウノ
ルグス

アルツトの民 

レイメル

リュグージョ 

カグヤ・シラトリ
エゾラ・カノー

関連機体 

キャトル
長年コロニー内に放置されていた作業用機体。苔むした状態で役に立たない機械文明の象徴として崇められていたが、コロニーを訪れたモンド・アガケの手により修復された。
ムーンガンダム
コロニーに漂着したG-ドアーズの頭部を、同じく戦闘で頭部を破壊されたバルギルに移植した機体。「ムーン・ムーンで育ったユッタによって動かされる機体」という意味合いを込めて「ムーンガンダム」と名付けられた。
クレイン
カグヤ・シラトリの保有する可変MS。宇宙世紀160年代、カグヤがムーン・ムーンに帰還した折に所属機となった。
オーテングー
宇宙世紀0160年代の司祭長であるエゾラ・カノーの専用機。リュグージョのある極東の島国の文化を受けた外観を持つ。
ミガッサ
ミカサ工房が開発した量産型モビルスーツ。宇宙世紀0160年代にムーン・ムーンの主力機として運用されている。
ムラサメ
宇宙世紀0091年に大破したキャトルに代わり、リュグージョで御神体として崇められていた大型MS。

関連用語 

バナール1
地球連邦が宇宙移民計画の初期段階に建造した島1号型コロニーで、サイド1建設終了と共に放棄されるがカミーグ社がメディシンを通じてここの入植権をヒッピー達に売り渡した事が、ムーン・ムーンの始まりとなる。
リュグージョ
ザンスカール戦争のどさくさに紛れて手に入れた地球の海底都市。住民達はザンスカール戦争後、宇宙からこちらに移住している。
カミーグ・リゾート社
コロニーそのものをリゾート化するため、バーナル1を買い上げた民間企業。連邦政府との裁判を有利に働かせるべく、ヒッピーらをバーナル1に移住させた。
メディシン
ハイコカを卸す代わりにムーン・ムーンへ生活物資を届ける反社会的勢力。
光族
機械文明を捨てて自然回帰を掲げるムーン・ムーンの主流派層。かつてアルツトの民を捨て子の森へと追放した者たちの子孫。普段は機械技術を否定しながら生きているが、13歳になった者は大人たちによってコロニーの実態を教えられる。科学技術の否定を掲げているため、電波や通信機といったものを知らず、医療技術についても民間療法以上の知識を持たず、コロニーの放射線対策の未熟さもあって短命の者も多いなど、その生活水準は低い。
アルツトの民
かつてハイコカをコロニーの水源に流して集団自殺を図り、光族との内乱を起こした者たちの末裔。また、光族が子捨ての森に捨てた赤子達を育て、自分達の一員としている。
子捨ての森の地下に幽閉されており、限られた者にしか接触を許されていない。光族とは逆に機械技術や薬学に長け、メディシンとの折衝を担っているが、その事は光族には知らされていない。
ハイ・コカイン
遺伝子組換えによって異常な繁殖速度と成果物の抽出効率が高められた特定禁輸植物。ムーン・ムーンの緑地総面積の内の約30パーセントを占める。
強化人間開発にも用いられるベタナールの原料でもあり、落ちた葉が発酵し、水源に混ざった結果、ムーン・ムーンの住民達はこれを微量ながらも接種し続け、やがて「天然の強化人間」と呼べる存在となっていった。
ハイコカの木は子捨ての森にのみ植生し、光族からも「毒煙の木」として忌み嫌われており、火災の際にも煙を吸わないよう徹底されている。
戦士隊
ムーン・ムーンの自警組織。光族の掟に基づいて銃などの火器類は使わず、剣や槍といった前時代的な武器で武装している。

リンク

脚注

  1. 事実、コロニー内では疾病率が高く、住民の中には生まれつき病を患っている者も多い。
  2. コロニー内に建てられた神殿などはその名残りで、一見石造りのように見えるが実際にはプラスチックで作られた模造品である。
  3. 彼らは正当に土地を買った入植者であり、これを追い出すには売買契約が無効である事を証明する裁判が必要となる。