ガンダム・バルバトス
ASW-G-08 ガンダム・バルバトス (Gundam Barbatos)
- 登場作品:機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
- デザイナー:鷲尾直広
- 分類:モビルスーツ
- 装甲:ナノラミネートアーマー
- 全高:18.0m
- 本体重量:28.5t
- 主動力:エイハブ・リアクター×2
- 開発組織:ギャラルホルンの前身組織
- 所属:CGS→鉄華団
- 主なパイロット:三日月・オーガス
鉄華団のモビルスーツ。厄祭戦が起こった約300年前に開発された機体で、「ガンダム・フレーム」と呼ばれる特殊なフレームを採用した72機の内の1機である。本機はその中でも特に汎用性に比重を置いた調整が施され、様々な環境に適応させるべく各種武装の換装を可能としている。背部のバックパックは中心にブースター、左右にウェポンアームがあり、武装をマウントできる。アームは展開が可能で、可動範囲もかなり広い。
武装はナノラミネートアーマーに対してダメージを与えられる質量破壊兵器を主に装備し、接近戦を行う。
操縦には有機デバイスシステムによる交感が必要であり、パイロットは生身とほぼ同感覚で動かせる。
現在では各部が経年劣化し、肩部、片腕が違ったりと一部の装甲が無くフレームが剥き出しの状態である。性能も十分には発揮できない状態だが、それでもギャラルホルンの最新鋭機グレイズ2体を圧倒する程の戦闘力を持つ。特に動力はエイハブ・リアクターを2基搭載し、それを高出力かつ並列で稼働させている事から片腕で高推力のMSを引き寄せられる程のパワーが発揮できる。
火星の砂漠に放棄されていたが、鉄華団の前身であるクリュセ・ガード・セキュリティの社長マルバ・アーケイによって発見・回収されて同社本部施設の動力源に使われていた。また将来的には転売も考えていて、不要だったコクピット周辺の部品のほとんどを抜き取った状態で秘匿している(その為、本機が格納されている動力室は最高機密扱いとなっている)。その一方で戦力として運用する事も考慮していたようであり、装備の一部も保有していたとされる。
その後、起動させる際にコクピットはモビルワーカーのインターフェイスを流用してある。しかしMSからフィードバックされる情報量はMWとは比較にならない程であり、それに耐えられなければパイロットの脳にダメージを与えてしまい、身体に障害が残ってしまうことさえ有り得る(因みに初期起動時や戦闘中、三日月は鼻血を出している)。
名称の「バルバトス」はソロモン72柱の第8位に位置する悪魔の呼称が由来であり、型式番号の「08」もこれの序列から取られたものと思われる。
第1形態
マルバによって発見された当初の状態。両肩部の装甲が無く、左腕部にはガントレットを装着している。
第1.5形態
クランク・ゼントとの決闘に応じた際の姿。左肩部に鹵獲したグレイズの肩部装甲を取り付けている。
第2形態
宇宙へ上がる直前、右肩部にもグレイズの肩部装甲を追加した状態。ナノラミネートアーマーに使用される特殊塗料で塗装した事で、カラーリングがグレイズの緑からバルバトスのパーソナルカラーである青と白に変更されている。
第3形態
第2形態のガントレットがあった左前腕部にガエリオ・ボードウィンのシュヴァルベ・グレイズから奪取したクローユニットを装着した状態。
ここにきて、鉄華団にモビルスーツを本格整備できる人員が居ない影響が表面化し、調整不足が祟って性能が低下していた。
第4形態
テイワズのデータベースに記録されていた厄祭戦の記録を元に同組織の本部「歳星」の技術者達が改修を行った状態。本機の本来の姿の複製品であるが、まだ技術が厄祭戦の頃の状態に至ってない為か当時の性能を取り戻すまでには及んでいない。
両肩部の装甲が本来の形状の復元物にされ、重量バランスが改善。同時にエイハブ・リアクターの出力も向上している。新規武装として太刀が追加された。
第5形態
地球降下作戦時、モンターク商会から提供された部品を使用して改修された状態。対キマリス戦を想定し、胸部にリアクティブアーマー(炸裂装甲)を追加している。この装甲は中央部が突き出た形となっていて、そこに相手のグングニールを敢えて突き刺させる事で装甲ごと弾き飛ばし、攻撃を無効化する仕組みである。その能力は高く、キマリス・ブースターで以前よりも機動力が強化されていた相手の突撃戦法を完全に防いでみせている。
両腰部にはアイン・ダルトンのシュヴァルベ・グレイズから鹵獲した腰部ブースターユニットを増設して機動力を強化し、両腕部にも武装を追加している(迫撃砲と機関砲の選択式)。
第5形態(地上戦仕様)
地球降下後に調整されたバルバトス。大気圏降下時に破損して使い物にならなくなった腰部ブースターユニットが取り外され、胸部反応装甲も戦闘時に弾き飛ばした事で失われている。メインウェポンだったメイスもストックをすべて使い切った為、新たに大型特殊メイス(通称レンチメイス)を装備している。
地球の重力に適応させる事を目的としてエーコ・タービンのアイディアで脚部のサスペンションに調整が加えられ、脚部をヒール状にして重心を上げる事で初動時の反応速度を引き上げている。これによって重力下での脚部機動力が向上した。
第6形態
最終決戦用に強化された形態。長期戦を想定しており、瞬発的な機動力と引き換えに無補給での長時間戦闘を可能としている。
胸部に高強度の追加装甲を取り付けて集中攻撃を受けやすいコクピットブロックを防護し、両肩部にはグレイズリッター一般機から鹵獲した装甲を装備している。
両腰部にはこれまでの小型スラスターとはまた別のスラスターユニットが追加され、これは燃料消費の軽減も兼ねて地上用に出力を調整している。
長距離航行形態
テイワズの圏外圏航行輸送機クタン参型に本体を収納した形態。大型ブースターとプロペラントタンクの併用によって、長距離航行を可能としている。
登場作品と操縦者
- 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
- パイロットは三日月・オーガス。
オルガ・イツカの独断で起動させられ、オーリス・ステンジャのグレイズを叩き潰した。クランク・ゼント機とアイン・ダルトン機とも互角以上に戦ったものの、スラスターのガスを補給し忘れていた事と阿頼耶識システムによる三日月への負荷のせいで相手の撤退を許してしまった。
その後は鉄華団の主戦力として運用され、ギャラルホルンやブルワーズといった敵対勢力のMSを次々と屠っていった。
装備・機能
特殊機能
- ナノラミネートアーマー
- 動力源であるエイハブ・リアクターから発せられるエイハブ・ウェーブに反応して硬化する性質を持つ特殊な塗料を塗布した装甲。実弾での攻撃に対して圧倒的な防御力を発揮するが、衝撃が比較的長い時間持続するような、質量による直接打撃は防げない。また、あくまで塗料なので実弾の集中攻撃で剥がすことは理論上可能な上、熱にも弱い。ビームを受け付けず、まるで油を塗ったものに水を当てるようになる。MSがビーム兵器を持たない理由の一つにこれがある。
- 阿頼耶識システム
- ナノマシンを介してパイロットの脳神経と機体のコンピュータを繋げる有機デバイスシステム。これによりパイロットの脳に疑似的に空間認識を司る器官を形成する。それにより機体の情報を直接脳に伝達し、機体を生身の感覚で操縦する事ができ、阿頼耶識を持たないMSより性能が向上する。尚、阿頼耶識システムを使用する為にはパイロット側にも外部手術により金属端子を埋め込む必要がある。しかしこの手術は危険な手術であり、死亡率も高い。ギャラルホルンはこれをよく思わない考えを持つものが多い。
- パージ
- 一部装備を機体から強制パージすることが可能。主に肩部など。
武装・必殺攻撃
- メイス
- 本機の主兵装で、マルバが保有していた装備の一つ。MSのフレームにも使われている高硬度レアアロイ製で、巨大な両手持ちの戦棍・鎚鉾の類であり質量破壊兵器となっている。柄の部分は上半分が伸縮可能でバックパックに背負って搭載している時はこの機能で柄を短縮している。ナノラミネートアーマーを一撃で粉砕できる程の威力を持ち柄頭後部には4基のスラスターがある。先端にパイルバンカーを有し、こちらもナノラミネートアーマーを容易く貫通するだけの威力が有るが、駐退複座機構が無い為杭を射出して相手に刺さったままの場合、杭打ち機構は戻って杭を再装填するまで使用不可になる。通常は両手で保持して振り回すが、片手で振り回したり投擲武器として使われる事もある。
三日月が初めて乗り込んだ頃から愛用していた武器だが、地球降下前の戦闘で全てのストックを使い果たした。一期最終話のラストカットで宇宙を漂うメイスの姿が描かれている。 - 太刀
- 歳星で錬成された日本刀型の実体刀剣、ただし本来の日本刀の太刀とは異なる点が散見される(西洋や中華刀剣の様な曲がった柄尻を持つ、反りがほとんど無い等々)。第4形態時に追加された。
メイスと比較して単純な破壊力では劣るが本来の刀剣として扱う分には軽量で取り回しが良く、ピンポイント攻撃を行う際に有効である。後にバルバトスのマニピュレーターに合わせた鍔とグリップ補助パーツが追加され、運動エネルギーのロスを最小限に止められるようになった。
メイスを愛用していた(剣術を知らない)三日月にとってはかなり扱い難い武器である様で、慣れるのにはかなり時間がかかっており当初は敵の隙を衝いた刺突でしか扱えていなかった。メイスを失ってからもレンチメイスを代わりに使用し、太刀はほとんど使用しないという事が多かったが、実は三日月はこの武器を殴ったり突き刺す為の細長い棒で使い方もメイスと同じと勘違いしていたらしく、グレイズ・アインとの戦闘中に「相手を殴るのではなく斬る為の武器」とようやく扱い方を理解、相手のフレームを装甲ごと両断する威力を見せている。 - 300mm滑腔砲
- バックパックアームパーツを介して装着される実弾砲。第2形態時から使用した。こちらもマルバが保有していた装備の一つ。砲身を折り畳み同軸機銃ブロックを後退させた収納形態への可変が可能で背中にはこの状態で背負う。装弾数は12発で、発射時に薬莢部を燃焼させて針状の弾芯のみを飛ばす仕組みである。ちなみにこの説明文は現実の滑腔砲採用の戦車砲弾の説明とほぼ同じ。
無重力空間での使用を前提として造られ、命中精度よりも威力を重視して弾速を高めている。そのため本来ならば宇宙空間におけるMS戦では当てる事すら難しいのだが、阿頼耶識システムを使用すれば問題は無い。着弾した場合、基本的にナノラミネートアーマーの前では体勢を崩す程度だが、至近距離から撃った場合はその限りではない。当初は「滑空砲」表記だったり「ライフル砲である」などの表記がされていたが誤記で有った為か後発の設定書籍や文字設定では「滑腔砲」に改められている。
- 60mmマシンガン
低軌道ステーションでの戦闘時にパージしている。余談で、公式にてルプスレクスのシルエットが公開された際にサブアームを収納するカバー部分の先がガントレットに見えたせいで原点回帰など勘違いした人達がいた。
低軌道ステーションでの戦闘時にシュヴァルベ・グレイズから入手した物で、失ったガントレットの代わりに左腕部に装着された。
元々はクタン参型用に開発された物だが、MSにも装備可能だったため装備された。
威嚇や近接戦闘時に効果を発揮するが、装弾数の問題で遠距離射撃には向かない。
地球降下時の戦闘でバルバトスがメイスを失い、太刀は三日月が使い辛いという理由で持ち出され、これ以降は新たな主兵装として使われる事になった。
低軌道ステーションでの戦闘時に敵から奪って使用していた。
ドルトコロニー群での戦闘でガンダム・キマリスとの初戦の時持っていた武装をほぼ失った際にリベイクから受け取って使用している。
地球降下時の戦闘で一時的に奪って使用している。(なお、牙突に使ったわけではなく、キマリスに対し投擲している。)
対決・名場面
関連機体
- ガンダム・バルバトスルプス
- エドモントンでの決戦後、テイワズの協力を受けて鉄華団が改修・強化したバルバトス。
- ガンダム・バルバトスルプスレクス
- MA戦の後、大破したバルバトスルプスを更にテイワズの技術力で改修した形態。一部にMAの装備を使っている。
- バエル、キマリス、グシオン、フラウロス、アスタロト、ダンタリオン、ウヴァル
- ガンダム・フレームを採用している機体。バルバトスと同じく、ソロモン72柱の悪魔の名を冠している。ここにあげたこれらは、いま現存するガンダム・フレームであり、フレームのみの状態になっているMSも居る。
- ガンダム・グシオンリベイク
- 同じガンダム・フレームを採用している。改修の際にバルバトスの予備パーツを流用されている。
- イサリビ
- 鉄華団の有する強襲装甲艦。本機の母艦でもある。
- グレイズ改、グレイズ改弍/流星号
- グレイズ戦で鹵獲したグレイズ2機を所謂ニコイチとスクラッチして鉄華団が改修した僚機。グレイズ改は肩部や頭部など、改修部分が(資金の少ない鉄華団の苦渋の策で)白だが、流星号はバイオレットピンクである。
- グレイズ、グレイズ (指揮官機)、シュヴァルベ・グレイズ (ガエリオ機)、シュヴァルベ・グレイズ (アイン機)、グレイズ・リッター(一般機)
- これらの装甲、武装の一部を戦闘で鹵獲し装備している。
- クタン参型
- 長距離航行形態のブースターとなる輸送機。第五形態時には装備を流用している。
- CGSモビルワーカー
- 三日月が乗るMWのコックピットを流用している。
- バルバトス
- 『SDガンダム G GENERATION』シリーズに登場する同名の機体。ガンダムタイプでもなければMSでもないしサイズ(Gジェネシリーズにおける戦艦に搭載する際必要とするコストのようなもの、SやM、Lなどで表記する)がXXLと超大型で似ても似つかぬ機体なので混同は避けておこう(ただ、このバルバトスはあまり認知度が高い訳では無いのでそういったことは少ないだろう)。
余談
- 本機は敵から鹵獲した武器や装甲を換装する事によって「段階的に進化するガンダム」であるとされる(AGE-1などとはまた違った方法)。
本編で形態が変化するごとにOPでの姿も同じく変化している。2期OPではルプスとルプスレクスとの違いが細かいせいで気づかない人も多かった。 - ガンダムシリーズの主人公機としては珍しくビーム兵器を一切装備していない(それどころか内蔵式の固定武装が一切無い)。