「ジオング」の版間の差分

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開発には[[ビショップ計画]]で得られたデータが活用されており、最大の特徴として[[サイコミュシステム]]を搭載する。これによって[[ミノフスキー粒子]]散布技術の発達に伴って無効化された電子戦、特に遠隔誘導技術をほぼ完璧に代替し、逆説的に当時の最新兵器であったMSをも凌駕する、空間戦闘用機動兵器のひとつの究極の形と謳われた。だが、この機体の開発は非常に難航し、その途上で[[ザクII]]をベースとする[[サイコミュ試験用ザク]]などが試作されている。
 
開発には[[ビショップ計画]]で得られたデータが活用されており、最大の特徴として[[サイコミュシステム]]を搭載する。これによって[[ミノフスキー粒子]]散布技術の発達に伴って無効化された電子戦、特に遠隔誘導技術をほぼ完璧に代替し、逆説的に当時の最新兵器であったMSをも凌駕する、空間戦闘用機動兵器のひとつの究極の形と謳われた。だが、この機体の開発は非常に難航し、その途上で[[ザクII]]をベースとする[[サイコミュ試験用ザク]]などが試作されている。
  
当時、サイコミュそのものがようやく実用化が達成されたばかりであり、サイコミュデバイス自体の小型化も困難であり、加えて全身に合計13基のビーム砲を固定武装として搭載し、これを稼働させるエネルギーを賄う為にジェネレーターは大型化。通常のモビルスーツの3.8倍のキャパシティで設計が行われたため、機体もMSとしては巨大なものとなってしまった。また、サイコミュを搭載した高性能機として開発されているものの、A級ニュータイプの出現と前後して無線誘導型サイコミュ兵装の実用化の目処が立った事から、格闘戦のメリットを失ったジオングは一部プロジェクトチームを残して本国防空隊の工廠へ預けられ、研究が続行された。[[ア・バオア・クー]]戦では稼働状態にあった3機のうちの1機が[[キシリア・ザビ]]から[[シャア・アズナブル]]に与えられ実戦投入される。残り2機は開発中だった歩行ユニットと併せて戦火により喪失、シャア機も[[ガンダム]]との戦闘で大破し失われた。また、実戦投入された機体も未完成(完成度80%)であり、上腕部装甲の一部が未装着のままであった。
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当時、サイコミュそのものがようやく実用化が達成されたばかりであり、サイコミュデバイス自体の小型化も困難だった。加えて全身に合計13基のビーム砲を固定武装として搭載し、これを稼働させるエネルギーを賄う為にジェネレーターは大型化。通常のモビルスーツの3.8倍のキャパシティで設計が行われたため、機体もMSとしては巨大なものとなってしまった。また、サイコミュを搭載した高性能機として開発されているものの、A級ニュータイプの出現と前後して無線誘導型サイコミュ兵装の実用化の目処が立った事から、格闘戦のメリットを失ったジオングは一部プロジェクトチームを残して本国防空隊の工廠へ預けられ、研究が続行された。[[ア・バオア・クー]]戦では稼働状態にあった3機のうちの1機が[[キシリア・ザビ]]から[[シャア・アズナブル]]に与えられ実戦投入される。残り2機は開発中だった歩行ユニットと併せて戦火により喪失、シャア機も[[ガンダム]]との戦闘で大破し失われた。また、実戦投入された機体も未完成(完成度80%)であり、上腕部装甲の一部が未装着のままであった。
  
 
ジオングは純粋な宇宙戦用に開発されている為、通常のモビルスーツに見られる歩行ユニットは装着されておらず、この機体の股関節部分には脚部を装備するための充分なクリアランスはなく、相当する部位にはプロペラントタンクなどをはじめとするスラスター系の設備が実装されている。スカート後部の5基のバーニアは設計当初から設置されていたものであるが、本来なら脚部が装備されたであろう部位に装備されている2基のコンフォーマルバーニアは脚部そのものの代替デバイスとなっていた。ジオングに連なる計画の内、歩行機能をオミットし空間戦闘用兵器とするプランがあったことは[[サイコミュ高機動試験用ザク]]の存在からも傍証が得られており、一般的に言われる「80%の完成度」が、脚部の存在の有無とは必ずしも合致する訳ではない。
 
ジオングは純粋な宇宙戦用に開発されている為、通常のモビルスーツに見られる歩行ユニットは装着されておらず、この機体の股関節部分には脚部を装備するための充分なクリアランスはなく、相当する部位にはプロペラントタンクなどをはじめとするスラスター系の設備が実装されている。スカート後部の5基のバーニアは設計当初から設置されていたものであるが、本来なら脚部が装備されたであろう部位に装備されている2基のコンフォーマルバーニアは脚部そのものの代替デバイスとなっていた。ジオングに連なる計画の内、歩行機能をオミットし空間戦闘用兵器とするプランがあったことは[[サイコミュ高機動試験用ザク]]の存在からも傍証が得られており、一般的に言われる「80%の完成度」が、脚部の存在の有無とは必ずしも合致する訳ではない。
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この機体自体に複数のプランが並行しており、歩行ユニットもその一つとして開発されており、その場合はロケット・モーターをユニットごと交換する設計となっていたとされる。ただし、この機体が脚部を持つ、いわゆる「フル装備」状態でのプランのまま完成していたとしても、全高が35mにも及ぶ機体を搭載可能な補給艦も航宙空母も存在していなかった当時においては、投入可能な局面もかなり限定されていたであろうことは想像に難くなく、重力下戦闘に対応できたかどうかにも疑問が残るという。そのような運用や兵站などの局面から見てもジオングはMSとして常軌を逸したものであり、むしろ[[モビルアーマー]]的な運用に特化させた技術陣の判断は当時の戦況からすれば最善のものだったと言えた。
 
この機体自体に複数のプランが並行しており、歩行ユニットもその一つとして開発されており、その場合はロケット・モーターをユニットごと交換する設計となっていたとされる。ただし、この機体が脚部を持つ、いわゆる「フル装備」状態でのプランのまま完成していたとしても、全高が35mにも及ぶ機体を搭載可能な補給艦も航宙空母も存在していなかった当時においては、投入可能な局面もかなり限定されていたであろうことは想像に難くなく、重力下戦闘に対応できたかどうかにも疑問が残るという。そのような運用や兵站などの局面から見てもジオングはMSとして常軌を逸したものであり、むしろ[[モビルアーマー]]的な運用に特化させた技術陣の判断は当時の戦況からすれば最善のものだったと言えた。
  
コクピットは頭部と胸部の2箇所にあり、パイロット2名による運用も可能。その際は火器管制(頭部)と機体制御(胸部)を分担するが、ニュータイプパイロット用の感応波センサーは頭部コクピットに備えられており、頭部から全機能をコントロールする事ができた。また、頭部は緊急脱出ポッドとしても運用でき、データ及びパイロットの回収率が高められている。サイコミュの主機はボディ側に搭載されており、頭部との接続が途絶えた場合にはミノフスキー通信(いわゆる無線式サイコミュ)による遠隔制御に切り替えることも可能である。双方のコクピットは機体自体が航宙艇並みの規模だったこともあってか往還可能となっているが、試作機であったためか機体の起動や初期設定などはボディ側のコクピットで行う必要があった。なお、ボディユニットは中型の航宙戦闘艇そのものであり、高出力ジェネレーターと豊富なプロペラントを内装。このほか、[[エルメス]]に載されていたサイコミュとほぼ同等のスペックを持つデバイスが搭載されている<ref>エルメスはコクピット後方に脱出装置や避難ブロックを備えていたが、デバイスとコクピットが隣接していたためトータルでの占有体積はジオングよりは少なく、またジオングは基本的二頭部で機体を制御するように設計されているが、ボディ側にも設備的には頭部のものと同等のコクピットを有し、それぞれに送受信端末を装備していたため、これが機体を大型化させる要因にもなっていた。</ref>。
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コクピットは頭部と胸部の2箇所にあり、パイロット2名による運用も可能。その際は火器管制(頭部)と機体制御(胸部)を分担するが、ニュータイプパイロット用の感応波センサーは頭部コクピットに備えられており、頭部から全機能をコントロールする事ができた。また、頭部は緊急脱出ポッドとしても運用でき、データ及びパイロットの回収率が高められている。サイコミュの主機はボディ側に搭載されており、頭部との接続が途絶えた場合にはミノフスキー通信(いわゆる無線式サイコミュ)による遠隔制御に切り替えることも可能である。双方のコクピットは機体自体が航宙艇並みの規模だったこともあってか往還可能となっているが、試作機であったためか機体の起動や初期設定などはボディ側のコクピットで行う必要があった。なお、ボディユニットは中型の航宙戦闘艇そのものであり、高出力ジェネレーターと豊富なプロペラントを内装。このほか、[[エルメス]]に載されていたサイコミュとほぼ同等のスペックを持つデバイスが搭載されている<ref>エルメスはコクピット後方に脱出装置や避難ブロックを備えていたが、デバイスとコクピットが隣接していたためトータルでの占有体積はジオングよりは少なく、またジオングは基本的に頭部で機体を制御するように設計されているが、ボディ側にも設備的には頭部のものと同等のコクピットを有し、それぞれに送受信端末を装備していたため、これが機体を大型化させる要因にもなっていた。</ref>。
  
ジオングのコンセプトは後のニュータイプ用[[モビルスーツ]]や[[モビルアーマー]]に引き継がれている。なお、機体が7つのパーツに分離し、その全てがワイヤーレスでオールレンジ攻撃を行うという機体プランも存在していたらしく、仕様書の存在も取り沙汰されている<ref>それこそが「YMS-16」系の一連のプランとは一線を画する「MS-16X計画」の究極の目的であったと言われ、更に同計画の切り札となるという意味で「Trumpf X(トルムプフ・イクス)」と呼ばれるプロジェクトが存在し、機体を7つに分離する計画はそちらだとする説もある。</ref>。
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ジオングのコンセプトは後のニュータイプ用[[モビルスーツ]]や[[モビルアーマー]]に引き継がれた。なお、機体が7つのパーツに分離し、その全てがワイヤーレスでオールレンジ攻撃を行うという機体プランも存在していたらしく、仕様書の存在も取り沙汰されている<ref>それこそが「YMS-16」系の一連のプランとは一線を画する「MS-16X計画」の究極の目的であったと言われ、更に同計画の切り札となるという意味で「Trumpf X(トルムプフ・イクス)」と呼ばれるプロジェクトが存在し、機体を7つに分離する計画はそちらだとする説もある。</ref>。
  
 
== 登場作品と操縦者 ==
 
== 登場作品と操縦者 ==
 
;[[機動戦士ガンダム]]
 
;[[機動戦士ガンダム]]
:[[キシリア・ザビ]]から与えられた機体に[[シャア・アズナブル]]が搭乗。サイコミュの慣熟が不完全な状態であったものの、オールレンジ攻撃で[[アムロ・レイ|アムロ]]の[[ガンダム]]を攻め立てた。最期は頭部ユニットまで追い詰められ、自動操縦のガンダムと相打ちになるもののシャアは寸での所で脱出している。
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:初登場作品。[[キシリア・ザビ]]から与えられた機体に[[シャア・アズナブル]]が搭乗。サイコミュの慣熟が不完全な状態であったものの、オールレンジ攻撃で[[アムロ・レイ|アムロ]]の[[ガンダム]]を攻め立てた。最期は頭部ユニットまで追い詰められ、自動操縦のガンダムと相打ちになるもののシャアは寸での所で脱出している。
 
;[[MSV]]
 
;[[MSV]]
 
:[[パーフェクト・ジオング]]の設定ができた事で、本機と並行して脚部が開発されていたという設定が追加された。シャア搭乗機を含めた3機がア・バオア・クー工廠で建造中だったものの、連邦軍の攻撃により脚部を含めた全ての機体が失われている。また、[[パーフェクト・ジオング]]の発展系であるMSN-03 ジオングも新たに設定されている。
 
:[[パーフェクト・ジオング]]の設定ができた事で、本機と並行して脚部が開発されていたという設定が追加された。シャア搭乗機を含めた3機がア・バオア・クー工廠で建造中だったものの、連邦軍の攻撃により脚部を含めた全ての機体が失われている。また、[[パーフェクト・ジオング]]の発展系であるMSN-03 ジオングも新たに設定されている。
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=== 特殊機能 ===
 
=== 特殊機能 ===
 
;[[サイコミュシステム]]
 
;[[サイコミュシステム]]
:ニュータイプ用のマン・マシン・インタフェース。[[オールレンジ攻撃]]を可能とする。
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:[[オールレンジ攻撃]]を可能とするニュータイプ用のマン・マシン・インタフェース。ニュータイプ用の感応波センサーは頭部コクピットに備えられているが、胴体にもエルメスに搭載されていたものとほぼ同等のスペックを持つデバイスが搭載されているが、デバイス自体の小型化が困難であったこともあり、機体の大型化を招く要因となった。
 
;分離
 
;分離
:コクピットのある頭部を分離し緊急脱出ポッドとして運用可能。実際にはオールレンジ攻撃の一画を担う超小型の宇宙戦闘艇であるとも言える存在であり、本体とは独立したコクピットブロックであるばかりでなく、メインカメラや[[メガ粒子砲]]、移動用バーニアなどを備えている。稼働に必要なエネルギーはボディUNITから供給されているが、分離した場合に備え、複数の大容量コンデンサーと[[エネルギーCAP]]システムを共用し、動力や武装のバックアップとしている。それらを消費しきる前にボディと再結合すればプロペラントの再充填やメガ粒子砲のチャージも可能である。ただし、本体から分離した場合、戦闘艇としての実用稼働時間は60分(10分とする説もある)にも満たないため、脱出や撹乱以上の戦闘には耐えられない。そのため、頭部は直接の戦闘を回避しつつ、各部を遠隔操作するという戦術も想定されていたようであるが、パイロットの力量次第ではMS1機分の戦力になると言われている。
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:コクピットのある頭部を分離し緊急脱出ポッドとして運用可能。実際にはオールレンジ攻撃の一画を担う超小型の宇宙戦闘艇であるとも言える存在であり、本体とは独立したコクピットブロックであるばかりでなく、メインカメラや[[メガ粒子砲]]、移動用バーニアなどを備えている。稼働に必要なエネルギーはボディユニットから供給されているが、分離した場合に備え、複数の大容量コンデンサーと[[エネルギーCAP]]システムを共用し、動力や武装のバックアップとしている。それらを消費しきる前にボディと再結合すればプロペラントの再充填やメガ粒子砲のチャージも可能である。ただし、本体から分離した場合、戦闘艇としての実用稼働時間は60分(10分とする説もある)にも満たないため、脱出や撹乱以上の戦闘には耐えられない。そのため、頭部は直接の戦闘を回避しつつ、各部を遠隔操作するという戦術も想定されていたようであるが、パイロットの力量次第ではMS1機分の戦力になると言われている。
  
 
=== 武装・必殺攻撃 ===
 
=== 武装・必殺攻撃 ===
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:胴体部に2門内蔵。砲口部がある程度可動するため対地・対空攻撃にも対応できる。本装備はジェネレーターからほぼダイレクトに接続された大容量のエネルギーコンバーターが圧縮ユニットの前段に設けられており、高出力での射出及び速射、連射が可能となっている。
 
:胴体部に2門内蔵。砲口部がある程度可動するため対地・対空攻撃にも対応できる。本装備はジェネレーターからほぼダイレクトに接続された大容量のエネルギーコンバーターが圧縮ユニットの前段に設けられており、高出力での射出及び速射、連射が可能となっている。
 
;有線制御式5連装メガ粒子砲
 
;有線制御式5連装メガ粒子砲
:両腕の指に装備されたビーム砲。両肘の先から分離し、有線制御によるオールレンジ攻撃を行う。五指すべてにビーム砲を搭載するため、指の各関節には強指向性の収束/偏向装置が関節数に応じて内蔵されており、それぞれが独立したベクトルのビームを射出することができ、なおかつ同時に同じターゲットを攻撃するといった運用も可能<ref>腕部のエネルギーCAPシステム二エネルギーが充填される際、指の関節内に発生する強力なフィールドによって指の先端が光って見えることもあるらしい。</ref>。<br/>有線式を採用しているのは殆どのパイロットが有効レベルのサイコミュを操作できなかった為。本体コクピットにパイロットが二名搭乗する事でニュータイプ能力者でなくとも使用は可能。<br/>ケーブルは戦闘中に切断される場合を想定し、予備が2~3本搭載されていたとされているが、再接合の方法など、その実効性には不明な点も多い。マニピュレーターとしては既存の機体とは規格が大幅に異なるため、既存の武装は特別なエネルギーを必要としない斬撃武装などを除きほとんど使用できない。
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:両腕の指に装備されたビーム砲。両肘の先から分離し、有線制御によるオールレンジ攻撃を行う。五指すべてにビーム砲を搭載するため、指の各関節には強指向性の収束/偏向装置が関節数に応じて内蔵されており、それぞれが独立したベクトルのビームを射出することができ、なおかつ同時に同じターゲットを攻撃するといった運用も可能<ref>腕部のエネルギーCAPシステムにエネルギーが充填される際、指の関節内に発生する強力なフィールドによって指の先端が光って見えることもあるらしい。</ref>。<br/>有線式を採用しているのは殆どのパイロットが有効レベルのサイコミュを操作できなかった為。本体コクピットにパイロットが二名搭乗する事でニュータイプ能力者でなくとも使用は可能。<br/>ケーブルは戦闘中に切断される場合を想定し、予備が2~3本搭載されていたとされているが、再接合の方法など、その実効性には不明な点も多い。マニピュレーターとしては既存の機体とは規格が大幅に異なるため、既存の武装は特別なエネルギーを必要としない斬撃武装などを除きほとんど使用できない。
 
:;防塵版
 
:;防塵版
 
::ジオングの腕部は戦況によってマニピュレーターとしての使用も前提としてあるため、出撃時には防塵版を装着している場合もあるという。その場合でもメガ粒子砲は問題なく使用することができるが、防塵版は一瞬で蒸発してしまう。
 
::ジオングの腕部は戦況によってマニピュレーターとしての使用も前提としてあるため、出撃時には防塵版を装着している場合もあるという。その場合でもメガ粒子砲は問題なく使用することができるが、防塵版は一瞬で蒸発してしまう。

2024年11月11日 (月) 03:54時点における最新版

ジオング
外国語表記 Zeong
登場作品
デザイナー 大河原邦男
テンプレートを表示
スペック
分類 ニュータイプ専用試作型モビルスーツ
型式番号 MSN-02 (MS-16X)
頭頂高 23m
全高 17.3m
本体重量 151.2t
全備重量 231.9t
主動力 熱核融合炉
ジェネレーター出力 9,400kW
スラスター総推力 187,000kg
装甲材質 超硬スチール合金
センサー有効半径 81,000m
開発組織 ジオン公国軍
所属 ジオン公国軍
主なパイロット シャア・アズナブル
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概要[編集 | ソースを編集]

一年戦争末期にジオン軍が極秘開発したニュータイプ専用モビルスーツ一年戦争でジオン軍が投入した最後のMSであると言われている。YMS-16系などの機体計画が提案された当初から開発が検討されていたもので、度重なる紆余曲折と計画変更を経てようやく完成した機体であった。

開発にはビショップ計画で得られたデータが活用されており、最大の特徴としてサイコミュシステムを搭載する。これによってミノフスキー粒子散布技術の発達に伴って無効化された電子戦、特に遠隔誘導技術をほぼ完璧に代替し、逆説的に当時の最新兵器であったMSをも凌駕する、空間戦闘用機動兵器のひとつの究極の形と謳われた。だが、この機体の開発は非常に難航し、その途上でザクIIをベースとするサイコミュ試験用ザクなどが試作されている。

当時、サイコミュそのものがようやく実用化が達成されたばかりであり、サイコミュデバイス自体の小型化も困難だった。加えて全身に合計13基のビーム砲を固定武装として搭載し、これを稼働させるエネルギーを賄う為にジェネレーターは大型化。通常のモビルスーツの3.8倍のキャパシティで設計が行われたため、機体もMSとしては巨大なものとなってしまった。また、サイコミュを搭載した高性能機として開発されているものの、A級ニュータイプの出現と前後して無線誘導型サイコミュ兵装の実用化の目処が立った事から、格闘戦のメリットを失ったジオングは一部プロジェクトチームを残して本国防空隊の工廠へ預けられ、研究が続行された。ア・バオア・クー戦では稼働状態にあった3機のうちの1機がキシリア・ザビからシャア・アズナブルに与えられ実戦投入される。残り2機は開発中だった歩行ユニットと併せて戦火により喪失、シャア機もガンダムとの戦闘で大破し失われた。また、実戦投入された機体も未完成(完成度80%)であり、上腕部装甲の一部が未装着のままであった。

ジオングは純粋な宇宙戦用に開発されている為、通常のモビルスーツに見られる歩行ユニットは装着されておらず、この機体の股関節部分には脚部を装備するための充分なクリアランスはなく、相当する部位にはプロペラントタンクなどをはじめとするスラスター系の設備が実装されている。スカート後部の5基のバーニアは設計当初から設置されていたものであるが、本来なら脚部が装備されたであろう部位に装備されている2基のコンフォーマルバーニアは脚部そのものの代替デバイスとなっていた。ジオングに連なる計画の内、歩行機能をオミットし空間戦闘用兵器とするプランがあったことはサイコミュ高機動試験用ザクの存在からも傍証が得られており、一般的に言われる「80%の完成度」が、脚部の存在の有無とは必ずしも合致する訳ではない。

この機体自体に複数のプランが並行しており、歩行ユニットもその一つとして開発されており、その場合はロケット・モーターをユニットごと交換する設計となっていたとされる。ただし、この機体が脚部を持つ、いわゆる「フル装備」状態でのプランのまま完成していたとしても、全高が35mにも及ぶ機体を搭載可能な補給艦も航宙空母も存在していなかった当時においては、投入可能な局面もかなり限定されていたであろうことは想像に難くなく、重力下戦闘に対応できたかどうかにも疑問が残るという。そのような運用や兵站などの局面から見てもジオングはMSとして常軌を逸したものであり、むしろモビルアーマー的な運用に特化させた技術陣の判断は当時の戦況からすれば最善のものだったと言えた。

コクピットは頭部と胸部の2箇所にあり、パイロット2名による運用も可能。その際は火器管制(頭部)と機体制御(胸部)を分担するが、ニュータイプパイロット用の感応波センサーは頭部コクピットに備えられており、頭部から全機能をコントロールする事ができた。また、頭部は緊急脱出ポッドとしても運用でき、データ及びパイロットの回収率が高められている。サイコミュの主機はボディ側に搭載されており、頭部との接続が途絶えた場合にはミノフスキー通信(いわゆる無線式サイコミュ)による遠隔制御に切り替えることも可能である。双方のコクピットは機体自体が航宙艇並みの規模だったこともあってか往還可能となっているが、試作機であったためか機体の起動や初期設定などはボディ側のコクピットで行う必要があった。なお、ボディユニットは中型の航宙戦闘艇そのものであり、高出力ジェネレーターと豊富なプロペラントを内装。このほか、エルメスに載されていたサイコミュとほぼ同等のスペックを持つデバイスが搭載されている[1]

ジオングのコンセプトは後のニュータイプ用モビルスーツモビルアーマーに引き継がれた。なお、機体が7つのパーツに分離し、その全てがワイヤーレスでオールレンジ攻撃を行うという機体プランも存在していたらしく、仕様書の存在も取り沙汰されている[2]

登場作品と操縦者[編集 | ソースを編集]

機動戦士ガンダム
初登場作品。キシリア・ザビから与えられた機体にシャア・アズナブルが搭乗。サイコミュの慣熟が不完全な状態であったものの、オールレンジ攻撃でアムロガンダムを攻め立てた。最期は頭部ユニットまで追い詰められ、自動操縦のガンダムと相打ちになるもののシャアは寸での所で脱出している。
MSV
パーフェクト・ジオングの設定ができた事で、本機と並行して脚部が開発されていたという設定が追加された。シャア搭乗機を含めた3機がア・バオア・クー工廠で建造中だったものの、連邦軍の攻撃により脚部を含めた全ての機体が失われている。また、パーフェクト・ジオングの発展系であるMSN-03 ジオングも新たに設定されている。
機動戦士ガンダム戦記 アバンタイトル
エリク・ブランケがジオングの出撃に立ち会っており、脚がない姿を見て「あれで正解なのか」と呟いている。
機動戦士ガンダム サンダーボルト
第4巻に登場。ア・バオア・クーで建造途中だった機体(2号機、3号機、機番不明機)が連邦軍に接収されている。OVA版の同シーンでは、2号機と3号機の間に脚部が確認できる。

装備・機能[編集 | ソースを編集]

特殊機能[編集 | ソースを編集]

サイコミュシステム
オールレンジ攻撃を可能とするニュータイプ用のマン・マシン・インタフェース。ニュータイプ用の感応波センサーは頭部コクピットに備えられているが、胴体にもエルメスに搭載されていたものとほぼ同等のスペックを持つデバイスが搭載されているが、デバイス自体の小型化が困難であったこともあり、機体の大型化を招く要因となった。
分離
コクピットのある頭部を分離し緊急脱出ポッドとして運用可能。実際にはオールレンジ攻撃の一画を担う超小型の宇宙戦闘艇であるとも言える存在であり、本体とは独立したコクピットブロックであるばかりでなく、メインカメラやメガ粒子砲、移動用バーニアなどを備えている。稼働に必要なエネルギーはボディユニットから供給されているが、分離した場合に備え、複数の大容量コンデンサーとエネルギーCAPシステムを共用し、動力や武装のバックアップとしている。それらを消費しきる前にボディと再結合すればプロペラントの再充填やメガ粒子砲のチャージも可能である。ただし、本体から分離した場合、戦闘艇としての実用稼働時間は60分(10分とする説もある)にも満たないため、脱出や撹乱以上の戦闘には耐えられない。そのため、頭部は直接の戦闘を回避しつつ、各部を遠隔操作するという戦術も想定されていたようであるが、パイロットの力量次第ではMS1機分の戦力になると言われている。

武装・必殺攻撃[編集 | ソースを編集]

頭部メガ粒子砲
口吻部に内蔵されたメガ粒子砲。頭部ユニットのみの状態でも使用可能であり、シャアは胴体を破壊されながらもこの装備でガンダムとの戦闘を継続した。なお、ジオングが装備するメガ粒子砲は、基本的に全てキアM-33E型と呼ばれるユニットをベースとしている。
腰部メガ粒子砲
胴体部に2門内蔵。砲口部がある程度可動するため対地・対空攻撃にも対応できる。本装備はジェネレーターからほぼダイレクトに接続された大容量のエネルギーコンバーターが圧縮ユニットの前段に設けられており、高出力での射出及び速射、連射が可能となっている。
有線制御式5連装メガ粒子砲
両腕の指に装備されたビーム砲。両肘の先から分離し、有線制御によるオールレンジ攻撃を行う。五指すべてにビーム砲を搭載するため、指の各関節には強指向性の収束/偏向装置が関節数に応じて内蔵されており、それぞれが独立したベクトルのビームを射出することができ、なおかつ同時に同じターゲットを攻撃するといった運用も可能[3]
有線式を採用しているのは殆どのパイロットが有効レベルのサイコミュを操作できなかった為。本体コクピットにパイロットが二名搭乗する事でニュータイプ能力者でなくとも使用は可能。
ケーブルは戦闘中に切断される場合を想定し、予備が2~3本搭載されていたとされているが、再接合の方法など、その実効性には不明な点も多い。マニピュレーターとしては既存の機体とは規格が大幅に異なるため、既存の武装は特別なエネルギーを必要としない斬撃武装などを除きほとんど使用できない。
防塵版
ジオングの腕部は戦況によってマニピュレーターとしての使用も前提としてあるため、出撃時には防塵版を装着している場合もあるという。その場合でもメガ粒子砲は問題なく使用することができるが、防塵版は一瞬で蒸発してしまう。

対決・名場面[編集 | ソースを編集]

ジオング出撃
『1st』第42話より、シャアとジオング整備士の会話シーン。キシリアより「完成度80%」と告げられ不安を見せるシャアに対し「冗談じゃない。現状でジオングの性能は100%出せる」と太鼓判を押す[4]。それでも「脚が付いてない…」と尤もな意見を呟くシャアに対し「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」と反論する等、名も無き一般兵が次々と名言を生み出した有名なシーンである。
後日談として、漫画「若き彗星の肖像」にて後にシャアがパーフェクトジオングに乗る際にこの整備士と再会し、整備士が「足も満更無駄ではなかった」と評価を改めたエピソードがある。
ガンダム
『1st』第42~43話より。アムロのニュータイプ能力とガンダムに対抗し、シャアのジオングは有線ビーム砲でガンダムに攻勢をかける。激しい攻防の末、ジオングは胴体部を全損しながらも頭部だけ脱出。左腕と頭部を損傷した状態のガンダムと相打ちとなった。

関連機体[編集 | ソースを編集]

改修機[編集 | ソースを編集]

パーフェクト・ジオング
本機の完成形。上腕部装甲が装着されたジオング。脚部ユニットを装着した機体を指す場合もある。
高機動型ジオング
ブースターやスラスターが追加された機体。武装にプラズマリーダーが追加されている。
パーフェクト・ジオング (サンダーボルト版)
機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場するジオングの改修機。武装コンテナの他、機体下部にはプロペラントタンク兼ブースターが追加されている。

系列機・派生機[編集 | ソースを編集]

サイコミュ試験用ザク / サイコミュ高機動試験用ザク
ジオングの前身にあたる機体。
ジオング (MSN-03)
ジオングの内、『MSV』に文字設定のみ存在する機体。上記の完成形をさらに完全なサイコミュ搭載機として完成させた機体で、頭、胸、腰、両腕、両脚の7ブロックでオールレンジ攻撃が可能な機体として計画されていた。MSN-03のナンバーはその後ヤクト・ドーガに受け継がれている。
グレート・ジオング
後継機。形式番号や分離機能からして上記MSN-03の完成形または発展形と思われる。
キケロガ
ジオングのプロトタイプに位置する機体。

技術的関与のある機体[編集 | ソースを編集]

サイコガンダム
本機のコンセプトを引き継いで戦後連邦軍で開発された機体。
ジョング
本機を宇宙世紀0150年代の技術を用いて再現した機体。

その他[編集 | ソースを編集]

ネオ・ジオング
本機の名を冠する機体。シナンジュとハルユニットが合体したモビルアーマーである。
グラン・ジオング
本機の名を冠する機体。生存性を重視した重モビルスーツである。
ハイドラガンダム
新機動戦記ガンダムW デュアルストーリー G-UNIT』に登場する機体。MA形態が本機をオマージュしている。
フェブラル
機動新世紀ガンダムX』における本機のオマージュ機。
ヘルジオング マリーン / ヘルジオング ギャラクシー
ガンダムビルドファイターズ』に登場する、本機をベースに改造したガンプラ。前者が水中用で、後者が宇宙用。
ジオング・スペクトラ
ビルドダイバーズ GBWC』に登場するガンプラ。頭部アンテナがオミットされている以外機体形状はジオングと同じだが、外装がプラ板とパテで改修されている。

商品情報[編集 | ソースを編集]

ガンプラ[編集 | ソースを編集]

フィギュア [編集 | ソースを編集]

リンク[編集 | ソースを編集]

脚注[編集 | ソースを編集]

  1. エルメスはコクピット後方に脱出装置や避難ブロックを備えていたが、デバイスとコクピットが隣接していたためトータルでの占有体積はジオングよりは少なく、またジオングは基本的に頭部で機体を制御するように設計されているが、ボディ側にも設備的には頭部のものと同等のコクピットを有し、それぞれに送受信端末を装備していたため、これが機体を大型化させる要因にもなっていた。
  2. それこそが「YMS-16」系の一連のプランとは一線を画する「MS-16X計画」の究極の目的であったと言われ、更に同計画の切り札となるという意味で「Trumpf X(トルムプフ・イクス)」と呼ばれるプロジェクトが存在し、機体を7つに分離する計画はそちらだとする説もある。
  3. 腕部のエネルギーCAPシステムにエネルギーが充填される際、指の関節内に発生する強力なフィールドによって指の先端が光って見えることもあるらしい。
  4. 誤解されるケースもあるが、ジオングの未完成の部分は上腕部であり、脚部はオプションである。