グリプス戦役
グリプス戦役(Gryps War/Gryps Conflict)[編集 | ソースを編集]
『機動戦士Ζガンダム』の舞台となる戦争。
宇宙世紀0087年に勃発した、地球連邦軍の内紛を契機とする戦乱。一年戦争以来7年ぶりに発生した地球圏規模の宇宙戦争となる[1]。当初は連邦軍特殊部隊ティターンズと、反ティターンズ・親スペースノイドを掲げるエゥーゴによる内戦であったが、途中で旧ジオン残党一派であるアクシズが介入したことで、三つ巴の戦いへと変貌していった。
一年戦争後の地球圏は人口の半減、地球各地の都市やスペースコロニー群の破壊といった戦災から回復しつつあった。それと同時並行的に、限られた予算内での連邦軍の再建、連邦軍傘下のニュータイプ研究所の設立、デラーズ紛争を受けたティターンズの発足とその権限の強化が成されていた。一方、デラーズ紛争でコロニーの落着した北米の復興計画もあって、連邦の宇宙政策は著しく後退し、スペースノイドの間では反地球連邦政府運動が活発化。各地のコロニーでデモや集会が開かれていた。ティターンズはこの運動をジオン残党が扇動していると主張し、治安維持の名目で激しい弾圧を行うようになり、宇宙世紀0085年7月31日、サイド1・30バンチコロニーの集会に対してバスク・オムが致死性の毒ガスを使用。無関係な住民までも含む数百万人を虐殺する「30バンチ事件」が発生。この事件を契機にティターンズの暴走を阻止しようという連邦宇宙軍内部の勢力、連邦の軍事統制国家化を懸念する政界、宇宙政策の後退に困惑する財界が反連邦政府運動の名のもとに大同団結する事になり、これがエゥーゴの結成へと繋がった。そして、宇宙世紀0087年3月2日にサイド7「グリプス」でティターンズが試験中だったガンダムMk-IIがエゥーゴのクワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)率いる強行偵察部隊によって奪取されたのを契機に連邦軍内部のティターンズとエゥーゴによる抗争が表面化する事になる。
ガンダムMk-II強奪に成功したエゥーゴは出資者であるアナハイム・エレクトロニクス社の意向によりジャブローへの降下作戦を敢行。しかし、ティターンズ側は連邦軍の中枢を移転させ、ジャブロー自体も時限核爆弾の自爆により壊滅したため、制圧作戦は失敗。その後、ティターンズはグリプスから要塞化したグリプス2を分離。ルナツー宙域へと移動させ、更に旧ア・バオア・クー(ゼダンの門)を同宙域へ定着させると、これらを要塞拠点化。また、ダカールで開かれた連邦政府総会においてティターンズの権限を拡大させる法案が可決した事で、ティターンズは連邦軍を実質的に掌握。ティターンズはその行動をより過激化させていった。このような動きの中でアクシズが地球圏へ帰還し、エゥーゴはアクシズへ使節団を送るが、交渉は決裂。一方、ティターンズはパプテマス・シロッコの仲介によってアクシズと連合を結成する事に成功する。しかし、ティターンズはエゥーゴ・カラバの攻撃によってキリマンジャロ基地の放棄を余儀なくされた。その後、カラバの協力を得たクワトロがダカールの連邦議会を占拠。クワトロは自らがジオン・ズム・ダイクンの息子である事を明かし(ダカール演説)、地球規模でティターンズの実態を訴えた事で地球でのティターンズの勢力は後退する。
宇宙世紀0087年11月下旬、ティターンズはコロニーレーザーへと改造したグリプス2をグラナダ狙撃のために移動させ、サイド2に向けて試射。この脅威を排除するべく、エゥーゴは戦力不足を補うため、ザビ家再興の承認と引き換えにアクシズのハマーン・カーンの協力を取り付け、密約に基づきハマーンはグリプス2によるグラナダ狙撃を阻止。続いてゼダンの門にアクシズを衝突させ、同要塞を破壊。エゥーゴ艦隊は要塞から脱出を計るティターンズ艦隊を攻撃するもぐら叩き作戦を実行し、ティターンズとの彼我の戦力差を解消させる。
敗走を続けたティターンズは、シロッコによって掌握され、バスクら旧主流派も粛清される。そして、エゥーゴがアクシズから奪取したグリプス2を巡る艦隊戦を展開するが、エゥーゴがコロニーレーザーを使用した事でティターンズ艦隊は壊滅的な打撃を被り、シロッコもその後の戦闘で戦死。これによってティターンズは事実上崩壊するが、徹底抗戦を主張するティターンズの残存部隊の制圧にはその後数ヶ月を要し、グリプス戦役の終結は0088年4月上旬となった。また、この戦いの中でエゥーゴは戦力の過半数を喪失し、指導者的立場にあったクワトロが消息不明になった状態でその後の第一次ネオ・ジオン抗争を迎える事になる。
時節[編集 | ソースを編集]
- 宇宙世紀0085年7月31日:30バンチ事件
- 9月8日:サイド7にグリーン・ノア2(グリプス)建設
- 宇宙世紀0086年2月6日:アクシズが地球圏へ移動を開始
- 宇宙世紀0087年3月2日:ガンダムMk-II強奪事件・グリプス戦役勃発
- 5月11日:エゥーゴ、ジャブローを攻撃するも失敗
- 7月:ニューギニア基地攻防戦
- 8月10日:アポロ作戦
- 8月17日:ブレックス・フォーラ准将暗殺
- 8月24日:ティターンズ、グラナダへのコロニー落としを実行
- 9月21日:ティターンズ、サイド2への毒ガス攻撃を実行するも失敗
- 10月12日:アクシズ、地球圏に帰還
- エゥーゴ、アクシズと接触するも、クワトロとハマーンの個人的確執から交渉は決裂。アクシズ、ティターンズとの同盟を結成する。
- 11月2日:エゥーゴとカラバがキリマンジャロ基地を攻撃
- 11月16日:エゥーゴがダカールの連邦議会を掌握・エゥーゴ艦隊がコンペイトウを制圧
- 12月14日:ハッテ大虐殺
- ティターンズがグリプス2試射のためサイド2・18バンチを攻撃。また、グリプス2を移動させるための揺動としてサイド2・21バンチへ毒ガス攻撃を実行。その後13バンチにも毒ガス攻撃を試みるが、失敗する。
- 12月26日:アクシズ、エゥーゴと同盟を締結・グラナダへのグリプス2発射を阻止
- 宇宙世紀0088年1月25日:ペズンの反乱
- 小惑星基地ペズンに駐留する教導隊の一部青年将校が武装蜂起。ニューディサイズを名乗り小惑星基地ペズンを掌握。これに対し、地球連邦軍は今後のアクシズとの戦いを考慮し、ペガサスIIIを旗艦とするα任務部隊を派遣する。
- 2月2日:メールシュトローム作戦
- 2月20日:コロニーレーザーを巡る艦隊戦
- 2月22日:コロニーレーザー争奪戦終結
登場作品[編集 | ソースを編集]
- 機動戦士Ζガンダム
- 初出作品。
- 機動戦士Ζガンダム A New Translation
- 物語の改変に伴いアーガマが30バンチに立ち寄らず、物語後半の地球での出来事(キリマンジャロ基地攻撃~ダカール演説)もカットされるなど、大幅に展開が変更されている。
- ガンダム・センチネル
- ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに
- 『Ζ』本編では描かれなかったコンペイトウ(ソロモン)での戦闘が描かれており、ダカール演説によってコンペイトウ内の連邦正規軍部隊が蜂起。エゥーゴ艦隊の攻撃もあってティターンズは撤退を余儀なくされている。
- ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者
- 『ティターンズの旗のもとに』とは別視点でコンペイトウでの戦闘が描かれている他、ニューギニア基地の攻防も描かれている。
- 機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE
- 「水の星にくちづけをII」はグリプス戦役期が舞台となっている。
関連人物[編集 | ソースを編集]
エゥーゴ[編集 | ソースを編集]
- ブレックス・フォーラ
- ティターンズの専横に対しエゥーゴを創設した地球連邦軍の将校。連邦議会にてティターンズの非道を糾弾しようとしたが、ティターンズの手で暗殺された。
- クワトロ・バジーナ
- エゥーゴのモビルスーツパイロット。その正体はジオン・ズム・ダイクンの遺子であり、地球圏に偵察に来ていたシャア・アズナブルで、ブレックスの死後、エゥーゴの中心人物となってダカール演説を行い、ティターンズの権威を失墜させたが、最終決戦で行方不明となる。
- カミーユ・ビダン
ティターンズ[編集 | ソースを編集]
- ジャミトフ・ハイマン
- ティターンズを創設した地球連邦軍将校。ティターンズ総帥として地球連邦全体の実権掌握を謀ったが、パプテマス・シロッコにより暗殺される。
- バスク・オム
- ティターンズの実戦司令官。30バンチ事件等の残虐な事件を引き起こし、グリプス戦役終盤にレコア・ロンド(劇場版ではヤザン・ゲーブル)によって死亡した。
- パプテマス・シロッコ
- 木星帰りのティターンズ軍人。ジャミトフを暗殺し、独自の行動を起こすが最終決戦にて、カミーユ・ビダンに倒され死亡。
アクシズ[編集 | ソースを編集]
関連用語[編集 | ソースを編集]
- 30バンチ事件
- ティターンズによる毒ガスを用いたスペースノイド虐殺事件。この事件が反ティターンズ運動を激化させ、エゥーゴ創設の切欠となった。
- グリプス2
- サイド7のコロニーであるグリーンノア2をコロニーレーザーに改造した姿。終盤の舞台となる。
- アポロ作戦
- ティターンズによる月のフォン・ブラウン市制圧作戦。
- ダカール演説
- エゥーゴがダカールの連邦議会を制圧し、クワトロ・バジーナがシャア・アズナブルであることを明かしてティターンズの非道を訴えた演説。この演説以後、ティターンズは急速に支持を失った。
- ゼダンの門
- 旧ア・バオア・クー。グリプス2、ルナ2とともにティターンズの拠点となった。
- メールシュトローム作戦
- アクシズからグリプス2のコロニーレーザーを奪取する作戦。コロニーレーザーを渦のように取り囲むように遂行したことから名付けられた。